日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP47_1PM2] 鉱物の物理化学

2014年5月1日(木) 16:15 〜 17:00 422 (4F)

コンビーナ:*奥寺 浩樹(金沢大学理工学域自然システム学系)、興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)、座長:糀谷 浩(学習院大学理学部化学科)

16:30 〜 16:45

[SMP47-22] アルミニウムを含まないケイ酸塩メルトおよびホウケイ酸塩メルトにおける熱膨張特性の温度依存性

*菅原 透1勝木 準貴2吉田 智2松岡 純2南 和宏3越智 英治3 (1.秋田大学大学院、2.滋賀県立大学、3.日本原燃)

キーワード:シリケイトメルト, 熱膨張, 密度測定

常圧におけるシリケイトメルトの熱膨張特性は,高圧相平衡の基礎となるギブスエネルギーの温度・圧力依存性の計算やガラス溶融炉の熱対流のシミュレーションなどに不可欠な物性である.これまでに,アルミノシリケイトメルト(Lange, 1996; Potuzak et al., 2006)やマグマ組成のメルト(Lange, 1997; Ghiorso and Kress, 2004)では熱膨張(dV/dT)は組成のみの関数であり,温度に寄らないことが報告されてきた. 一方,SiO2-TiO2-Na2O系メルト(Liu and Lange, 2001)と50SiO2-25MgO-25CaO(Gottsmann and Dingwell, 2000)メルトについてはdV/dTが温度の増加で減少するとされているが,後者の原因については解明されていない.最近我々は,主成分がアルカリホウケイ酸塩メルトからなる模擬放射性廃棄物メルトもまた,dV/dTが顕著な負の温度依存性を示すことを明らかにした(Sugawara et al., 2013).本研究ではSiO2-Na2O系のガラス,工業用ソーダ石灰ガラスおよびホウケイ酸塩ガラスを用いて密度測定を行い,メルトのdV/dTの温度依存性の一般的性質について考察した.測定を行ったガラスの組成は (100-x)SiO2-xNa2O (x=23, 32.2), 71SiO2-6MgO-9CaO-14Na2O,66.6SiO2-yB2O3-(33.3-y)Na2O (y=8.3, 16.6, 25),および66.6SiO2-(12.5+z)B2O3-(4.2-z)Al2O3-zCaO-(16.7-z)Na2O (z=0, 4.2) (mol%)である.メルトの密度はアルキメデス二球法により測定した.また密度測定後のガラス試料をガラス転移領域でアニールした後,室温でのガラスの密度測定とTMAによる熱膨張測定を行った.室温密度と熱膨張係数を組み合わせることでガラス転移領域における過冷却メルトの密度を求めた.この値と高温密度を組み合わせることで,メルトの密度およびモル体積の温度依存性を明らかにし,dV/dTを決定した.SiO2-Na2O系メルトについては文献値とも合わせて解析を行った.本研究で測定したいずれのメルトについてもdV/dTは負の温度依存性を示した.SiO2-Na2O系メルトのdV/dTはSiO2=50から67mol%にかけて温度依存性が増加した後,さらにSiO2が増加するとdV/dTそのものがゼロに近づいて温度依存性も減少することがわかった. 本研究における71SiO2-6MgO-9CaO-14Na2OのdV/dTの負の温度依存性は67.8SiO2-32.2Na2Oメルト,diopsideメルト(Gottsmann and Dingwell, 2000)およびwollastoniteメルト(Potuzak et al., 2006)のdV/dT値の加成性を仮定した計算値と定量的に一致した.高温ラマン分光測定によれば,SiO2-Na2O系メルトおよびSiO2-Na2O-MgO系メルトにおいて,SiO2とMgOの増加および温度の増加とともにQ4種が顕著に増加することが知られている(Maehara et al., 2004, 2005).従って,SiO2-Na2O系メルトおよびMgO含有メルトにおいて観察されるdV/dTの温度依存性は,強固な構造であるQ4ユニット量の温度および組成変化に関連していると考えられる.本研究で測定したホウケイ酸塩メルトにおいては66.6SiO2-8.3B2O3-25Na2Oが最もdV/dTの負の温度依存性が顕著であり,Na2OをB2O3またはCaOで置換, B2O3をAl2O3で置換することにより,dV/dTの温度変化は小さくなった.これらのことは,BO4ユニットよりもBO3ユニットのモル体積が大きいこと,ならびに4配位から3配位へのホウ素配位数の変化が温度に対して非線形的に生じている(Wu and Stebbins, 2010)ことに由来するものと思われる.謝辞:本研究は経済産業省「使用済燃料再処理事業高度化補助金」の交付を受け,日本原燃(株)が実施している補助事業の成果の一部である.