日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP47_1PO1] 鉱物の物理化学

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*奥寺 浩樹(金沢大学理工学域自然システム学系)、興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)

18:15 〜 19:30

[SMP47-P03] SiO2-Al2O3-RO (R=Mg, Ca, Sr, Ba)系メルトの高温熱容量

*菅原 透1 (1.秋田大学大学院)

キーワード:シリケイトメルト, 比熱, 熱容量, 熱測定

シリケイトメルトの熱容量はマグマの相関係の熱力学的考察や工業用ガラスの溶融プロセスでの熱流動シミュレーションにおける重要な物性のうちのひとつである.これまでの研究によれば,アルミニウムを含まないシリケイトメルトの熱容量は温度に依存せず,また組成変化に対して線形的に変化するが,アルミノシリケイトメルトの熱容量は正の温度依存性を有し,加えて複雑な組成依存性を示すことが知られている(Richet and Bottinga, 1985;Richet and Mysen, 2005).しかしながら,ガラス転移領域からリキダス以上の広い温度範囲に渡る測定データが少ないために,その温度・組成依存性の詳細については不明な部分が多い.本研究ではCa, Sr, Baを含むアルミノシリケイトメルトについて新たな熱量測定を行った.
測定は50SiO2-25Al2O3-25CaO (An),36.5SiO2-27Al2O3-36.5CaO (Ca36.5), 8SiO2-30Al2O3-62CaO (Ca62), 75SiO2-12.5Al2O3-12.5SrO or 12.5BaO (Sr12.5, Ba12.5)組成(mol%)について行った.落下型熱量計を用いて873Kから1889Kの温度のメルトと273Kのガラスの間の相対エンタルピーを測定した.得られた相対エンタルピーを温度の関数として近似し,その微分から比熱を求めた.比熱はAnについて 1.356+0.0001151T(K) (J/K-g) と求まり,Richet and Bottinga (1985)による測定値とよく一致した.Ca36.5, Ca62, Sr12.5, Ba12.5については,それぞれ 1.532, 1.508, 1.313, 1.160 (J/g-K) と求まり,温度によらず一定であった.
本研究による測定結果を既報の落下熱量測定による高温熱容量データ(n=11, Richet and Bottinga, 1984; Courtial and Richet,1993; Neuville and Richet, 1991; Richet and Neuville, 1992)および示差走査熱測定によるTgよりやや上の熱容量データ(n=22, Webb, 2008; 2011)と組み合わせ,SiO2-Al2O3-RO (R=Mg, Ca, Sr, Ba)系メルトの熱容量の温度・組成依存性を考察した.Courtial and Richet (1993)が報告したように,SiO2-Al2O3-MgO系メルトにおいては熱容量に正の温度依存性が観察される.一方,SiO2-Al2O3-CaO系で正の温度依存性を示すのはAn組成のみに限定される.熱容量の組成変化はsymmetric solutionモデルを用いておおよそ近似することができた.メルトの混合熱容量はいずれも負の非理想性を示し,負の程度は Ba>Sr>Ca>Mg の順に大きくなった.このことはField strengthの小さなアルカリ土類金属イオンほどAlの電荷補償イオンと成りやすく,原子配置の自由度が制約されることに起因するものと考えられる.SrおよびBa含有メルトの熱容量の温度依存性の有無については,さらに組成範囲を広げて検証する必要がある.