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★ [SMP48-02] 地熱地域の深部反射法地震探査: 白沢・七ヶ宿カルデラを例として
キーワード:地熱地域, カルデラ, 反射法地震探査, MT法, 白沢カルデラ, 七ヶ宿カルデラ
はじめに: 東北日本においては、後期中新世から鮮新世にかけて多数のカルデラが形成された。この中で後期中新世のカルデラ群に伴う深部高温流体が、地熱発電の資源として期待されている。このような数kmという地下をターゲットとするには、流体の存否や断裂の状況などについて、地球物理学的な探査で把握することが、重要な課題となる。反射法地震探査は、地殻構造を断層や褶曲という分解能で描き出す手法である。とくに活断層の深部形状を描き出す目的で、90年代後半から深部反射法地震探査が実施されるようになった。東北日本においても、活断層の多くがカルデラの東側に位置することが多く、その深部延長を描き出す目的で、しばしばカルデラを横断して反射法地震探査が実施された(Sato et al., 2002a Tectonophys,: Sato et al., 2002b EPS)。ここでは、これらのカルデラ群を横切って実施された深部反射法地震探査の実例を示すとともに、地殻流体の検出に有効な手法であるMT法について紹介する。白沢カルデラ: 白沢カルデラはピストンシリンダー型のカルデラで、溶結凝灰岩・湖成層のカルデラ充填堆積物が分布する。小規模な貫入岩は存在するが大規模なリサージェントはない。バイブロサイスによる反射法地震探査によって、とくにカルデラの中央部の地下3-5 kmの深さに周波数の低い反射強度の大きい領域が、直交する測線の断面のいずれでも得られており、カルデラを生み出した冷却したマグマ溜まり中の流体の存在を示唆している可能性がある。これらは、自然地震によるトモグラフィ解析の結果(Nakajima et al., 2006 EPS)とも調和的である。七ヶ宿カルデラ: 宮城県南部の奥羽山脈東縁に位置するピストンシリンダー型のカルデラである。このカルデラを横切って、深部反射法地震探査相馬-米沢測線(佐藤ほか, 2013連合大会)と、ひずみ集中帯重点調査の一環としてMT探査が実施された。屈折トモグラフィーによるP波速度は、カルデラ充填堆積物に相当する速度低下領域を示すが、反射法地震探査ではとくに過去のマグマ溜まりに相当するような特異なバターンは認められない。MT法によれば、スラブ上面から低比抵抗領域がスラブから火山フロントにほぼ垂直に伸びる他、カルデラ下の地殻上部で孤立した低比抵抗域が位置しており、流体の存在を示唆する可能性がある。総合的なサイトサーベイ 解析方法やデータ取得についても、物理探査技術は進歩を続けており、自然地震や制御震源・電磁気的な手法など、総合したサイトサーベイが重要である。カルデラ下などの成層構造を示さないような岩体については、本来、反射法地震探査の成果は限定的であるが、断裂の発達状況の指数としての可能性を有している。地熱地域の深部微細構造、流体・断裂の存在状況は、物理探査の点からも先端的な課題である。