日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP48_2PM1] メルト-延性-脆性岩体のダイナミクスとエネルギー・システム

2014年5月2日(金) 14:15 〜 16:00 313 (3F)

コンビーナ:*土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、浅沼 宏(独立行政法人 産業総合技術研究所)、村岡 洋文(弘前大学北日本新エネルギー研究所)、伊藤 久男(独立行政法人 海洋研究開発機構)、座長:浅沼 宏(産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター)

15:15 〜 15:30

[SMP48-04] 間隙水圧下での花崗岩の破壊と浸透率変化

*濱崎 翔平1片山 郁夫1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:花崗岩, 間隙水圧, 浸透率

高温岩体発電(HDR)を始めとする涵養地熱システム(EGS)による地熱発電は従来の地熱発電と比べて,人工的に地熱貯留層を造成するという点で異なる。このシステムは天然の熱水や蒸気を使用しないため,従来の地熱発電の課題であった温泉の枯渇という問題が存在しない。また地熱貯留層の造成は水圧破砕とよばれ,地下深部の基盤岩に対する高圧水の注入に伴う破壊によって行われる。この破壊による基盤岩の流体の通りやすさを示す浸透率の変化は地熱貯留層の定量的な評価につながる重要な要素となる。本研究では間隙水圧下での花崗岩の三軸圧縮破壊において,浸透率に対する間隙水圧の効果を検証した。実験試料は大陸を構成する花崗岩から緻密で細粒な庵治花崗岩を選定し,三軸圧縮試験による破壊実験を行った。破壊前後の試料の浸透率測定及び三軸圧縮破壊は広島大学設置の容器内変形透水試験機を用いた。花崗岩試料は予め水で飽和させた後,実験を行った。封圧を20 MPa,三軸圧縮中に添加する間隙水圧を0 MPa(非排水条件下で三軸圧縮破壊を行う)から15 MPaの5 MPaおきに設定し,三軸圧縮変形を行った。破壊した試料は樹脂に固定し,偏光顕微鏡及び走査型電子顕微鏡下で組織観察を行った。また三軸圧縮破壊実験と浸透率測定結果から間隙水圧と浸透率及び破壊強度の関係を議論した。 三軸圧縮破壊前の封圧20 MPaにおける花崗岩試料の浸透率は2.0×10-19 m2となった。三軸圧縮破壊後の花崗岩試料の浸透率は破壊前と比べて増加し,封圧20 MPa,間隙水圧0 MPaにおける浸透率は2.5×10-18 m2と得られた。また破壊後の試料の浸透率は間隙水圧の増加に伴い増加し,間隙水圧15 MPaでは浸透率は7.0×10-17 m2に増加した。加えて,浸透率と三軸圧縮中に添加する間隙水圧には比例関係があることが明らかになった。また三軸圧縮破壊強度は間隙水圧の増加に伴い減少し,間隙水圧0 MPaにおいては400 MPaであったが,間隙水圧15 MPaでは350 MPaと減少した。破壊した試料には巨視的な破断面と小さなクラックを確認することが出来た。 三軸圧縮破壊中に添加する間隙水圧の増加により浸透率が比例的に変化する原因としては,間隙水圧が大きいほど生じるクラックの開口幅が増加し,またはクラックの連結・伝播の様子が著しく変化することに起因すると考えられる。またこのクラックの形態の変化が三軸圧縮破壊強度の減少にも影響しているとみられ,浸透率を議論する上ではこのクラックの分布や形態は一つのパラメータとなりうる。今後はより現実的な水圧破砕の再現を目指し,差応力下での水圧上昇による破壊実験や高温下での破壊実験における空隙率・浸透率測定を行う予定である。