日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP48_2PM2] メルト-延性-脆性岩体のダイナミクスとエネルギー・システム

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:00 313 (3F)

コンビーナ:*土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、浅沼 宏(独立行政法人 産業総合技術研究所)、村岡 洋文(弘前大学北日本新エネルギー研究所)、伊藤 久男(独立行政法人 海洋研究開発機構)、座長:土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)

16:15 〜 16:30

[SMP48-07] 脆性破壊による地殻の含水化:東南極セールロンダーネ山地の例

*宇野 正起1岡本 敦1土屋 範芳1 (1.東北大学大学院環境科学研究科)

キーワード:地殻流体, 脆性破壊, メルト, 吸水反応, 水ー岩石相互作用, 南極

島弧下部地殻はその地震波速度から主に角閃岩から構成されていると考えられており,含水鉱物に富んでいることが示唆される.しかしながら,そのような島弧地殻へのH2O流体供給の量とその供給様式は明らかになっていない.地殻内に置ける流体移動様式としては,浸透流とチャネリングフローの2通りが上げられる.島弧地殻下の条件では粒界が閉じていることから,脆性破壊を伴うチャネリングフローが卓越することが予想される.本研究では,地殻への流体供給に対する脆性破壊の役割を明らかにする為に,東南極セールロンダーネ山地南東の,地殻-メルト吸水反応帯を調査した.調査地域では,黒雲母-角閃石-かんらん岩に花崗岩質岩脈が脆性的に貫入しており,その間に反応帯が形成されている(Fig. 1).その生成条件は鉱物組み合わせから大まかに下部地殻条件下と推察され,下部地殻条件におけるメルト-岩石の力学・化学的相互作用を観察するのに適している.母岩に対する花崗岩質岩脈の体積割合は10-20%程度であり,境界部に厚さ約5-10 cmの反応帯が形成されている.花崗岩脈から母岩までは大きく以下の4つの反応帯に分けられ,その鉱物組み合わせは下記の通りである:i) 花崗岩脈  [quartz + plagioclase + K-feldspar + biotite + rutile + zircon ± muscovite]ii) ホルンブレンド-トレモライト帯  [hornblende + tremolite ± quartz ± apatite ± biotite]iii) トレモライト-黒雲母帯  [tremolite + biotite + spinel ± hornblende ± pyroxene]iv) 黒雲母-角閃石かんらん岩  [olivine + orthopyroxene + biotite + hornblende + Cr-spinel ± magnetite ± apatite]これらの反応帯は,花崗岩質メルトから放出されたH2Oと母岩との吸水反応として理解される.花崗岩脈の斜長石とそれに接するホルンブレンドに地質温度計[1]を適用した結果,この吸水反応の温度は約700 oCと見積もられる.本講演では,反応帯で形成された含水鉱物の量から,花崗岩質メルトから放出されたH2O量を見積り,含水メルトを通して島弧下に供給される流体量とその輸送,地殻へのH2O付加メカニズムを議論する.引用:[1] Holland and Blundy, 1994, Contrib. Mineral. Petrol., 116, 433-447.