日本地球惑星科学連合2014年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP49_1PO1] ナノから解き明かす地球惑星物質の性状と起源

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、村上 隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、月村 勝宏(産業技術総合研究所)、鈴木 正哉(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、光延 聖(静岡県立大学環境科学研究所)

18:15 〜 19:30

[SMP49-P03] 熊本県八代市赤松に産する蛇紋岩の鉱物学的研究

岩城 靖代1、*延寿 里美1上原 誠一郎1 (1.九州大学理学部地球惑星科学科)

キーワード:蛇紋石, アンチゴライト, 短冊状組織, メッシュ組織, 九州黒瀬川帯, 八代市赤松

1. はじめに
 蛇紋石は蛇紋岩を構成する主要鉱物でSiO4 四面体シートと MgO(OH) 八面体シートからなる珪酸塩鉱物である。Mg3Si2O5(OH)4 の理想化学組成を持つリザーダイト,クリソタイル Mg48Si34O85(OH)62 の理想化学組成を持つアンチゴライトが存在する。我々は黒瀬川構造帯の蛇紋岩の広域的な研究を行った(Tanaka et al., 2012)。しかし,地域ごとの詳細な研究は十分でないため,西部地域に位置する熊本県八代市二見赤松町および葦北郡芦北町田ノ浦町の蛇紋岩の構成鉱物および蛇紋石組織について研究を行った。

2. 試料および実験方法
 赤松地域の赤松太郎峠 (ATT),田浦 (TNU) の2地点で採集した64試料のうち,蛇紋岩と分類した52試料についてX線回折実験とSEM-EDS (JEOL JSM-7001F) を用いて構成鉱物の同定を行った。また偏光顕微鏡で蛇紋岩組織の観察を行い, SEM-EDSを用いて定量化学分析を行った。

3. 実験結果および考察
(1)蛇紋石の種類
 本地域の蛇紋岩はアンチゴライトに非常に富むもの (Type AA,16 試料),富むもの (Type A,20 試 料),乏しいもの (Type LC,10 試料) に分類できた。6試料は緑泥石等の混在により蛇紋石種の同定はできなかった。赤松地域はアンチゴライトに富む蛇紋岩が多いことが分かる。
(2)構成鉱物
 ATT,TNU共通で磁鉄鉱,クロム鉄鉱,緑泥石,ブルース石,ハイドロタルク石グループが同定され た。ATTのみ灰鉄柘榴石,方解石,ヒーズルウッド鉱 (Ni3S2),針ニッケル鉱 (NiS),TNUのみ苦土カンラン石,水苦土石,パイロオーロ石,アワルワ鉱 (Ni3Fe) が同定された。TNUのみに蛇紋岩の原岩のカンラン岩の主要鉱物である苦土カンラン石が含まれていたことから,ATT と比べて蛇紋岩化作用が弱かったと思われる。また,ATT には2種類のニッケル硫化鉱物,TNUにはニッケル鉄鉱物が含まれていたことから,蛇紋岩化作用による還元的な 環境で生成し,その際にATTのみにH2Sの供給が行われていたと思われる。
(3)蛇紋石組織
 赤松地域に多い塊状の蛇紋岩の蛇紋石は脈状,短冊状,カンラン石の仮晶組織であるメッシュ組織を持っていた。メッシュ組織は Type LC の蛇紋岩により発達していたが,メッシュ組織を持たない Type AA,Type A の蛇紋石にはメッシュ組織のコアのみが存在し,短冊状が刺さったような組織を持っていた。
Mg を置換する Al のイオン数 (apfu) は短冊状で 0.041,メッシュ組織のコアで 0.007,リムで 0.006 であり,短冊状がより富んでおり,コア・リムがより乏しかった。また短冊状は SiO2 重量%がコア・リムより高く,アンチゴライトの理想組成に近いことが分かった。

Reference
K.Tanaka, T. Inoo and S. Uehara (2012): Microtexture and chemical composition of serpentine minerals from Kurosegawa belt, Kyushu, Japan. The 2nd Asian Clay Conference, Abstract Book.