日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-RD 資源・鉱床・資源探査

[S-RD45_28PM1] 資源地質学の新展開: 地球環境変動と元素濃集

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 415 (4F)

コンビーナ:*星野 美保子((独)産業技術総合研究所)、山岡 香子(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、野崎 達生(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)、高橋 亮平(秋田大学大学院工学資源学研究科)、座長:山岡 香子(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、野崎 達生(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)

15:00 〜 15:15

[SRD45-03] 沖縄トラフ伊是名海穴Jade熱水域における表層堆積層中の熱水変質鉱物

*三好 陽子1石橋 純一郎2横山 由佳3高橋 嘉夫3 (1.産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門鉱物資源研究グループ、2.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、3.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:粘土鉱物, 熱水変質作用, 沖縄トラフ

沖縄トラフ伊是名海穴Jade熱水域では、硫化物からなるチムニーやマウンドが多数みつかり、それらの鉱物学的特徴は黒鉱鉱床のものに類似していることが指摘されている。黒鉱鉱床では、鉱床周囲に熱水変質作用によって形成された粘土鉱物が帯状分布していることが知られ、その出現分布は多くの研究により明らかにされている。本研究では、沖縄トラフ伊是名海穴Jade熱水域における海底下の粘土鉱物の出現分布を明らかにすることを目指して、まずは熱水域海底から表層堆積物を採取して、粘土鉱物を同定した。表層堆積物試料は2010年9月のNT10-17航海にて採取されたものを用いた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の無人潜水艇ハイパードルフィンに付属するMBARIコアラーを用いて、表層30cm程度のコア試料を採取した。コア試料から堆積物試料を取り出し、試料中の鉱物をX線回折法(XRD)によって同定した。いくつかの堆積物試料については、試料から2μm以下の粘土粒子だけを水ひで集め、XRDを用いて粘土鉱物を同定し、透過型電子顕微鏡(TEM)に付属するエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて粘土鉱物の化学組成を分析した。硫化物チムニーから320oCの高温熱水の噴出が見られる地点で採取された表層堆積物試料からは、カオリナイトが閃亜鉛鉱や方鉛鉱を伴って見出された。カオリナイトは酸性条件下で安定な熱水変質鉱物であることが知られている。実際、このコアの堆積物から抽出した間隙水は低いpHを示した。間隙水の低いpHは、堆積層中の硫化物が海水によって酸化されて溶解することによって作り出されたと推定される。高温熱水を噴出する硫化物チムニーから400m離れた地点では、100oC程度の低温熱水の湧出や液体CO2の湧出が確認されている。この地点で採取された表層堆積物試料からは、クロライトやスメクタイトが見出された。これらのクロライトやスメクタイトはAlに富む化学組成を示した。とくにクロライトはいくつかの黒鉱鉱床で報告されるAl-クロライト(スドーアイト)に似た化学組成を示した。スドーアイトはいくつかの黒鉱鉱床においてカオリナイトやパイロフィライトといった酸性環境で安定な熱水変質鉱物とともに産することが知られる。本研究により、沖縄トラフ伊是名海穴Jade熱水域の表層堆積層中に酸性環境で安定な熱水変質鉱物が出現することが明らかになった。