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[SRD45-04] 伊豆小笠原弧の海底火山に伴う熱水地球化学
キーワード:熱水鉱床, 水曜海山, 明神海丘, 熱水岩石反応
我が国周辺の海底熱水活動域は、伊豆小笠原弧と沖縄トラフに集中している。本州南方に延びる伊豆小笠原弧は、太平洋プレートの沈み込みに伴う海洋性島弧である。火山フロント上のいくつかの海底火山で、現在も熱水を噴出する熱水活動域が確認されている。このうち水曜海山と明神海丘の熱水域から採取した熱水試料の化学分析を行った。本講演では、その化学的特徴を、沖縄トラフの熱水域における熱水地球化学と比較しながら報告する。熱水試料は、水曜海山で2007年に実施されたNT07-08航海の潜航調査、および明神海丘で2012年に実施されたNT12-10航海で採取した。無人潜水(ROV)Hyper-Dolphin(JAMSTEC)にROCS採水器と呼ばれる吸引式の採水器を搭載して、試料の採取を行った。熱水の最高温度は、水曜海山で296℃、明神海丘で235℃であった。熱水の化学的特徴として、1)Mg, SO4を欠く、2) K, Caの濃度がともに海水より高いが、とりわけCaの増加が顕著である、3) NH4などの有機物由来と考えられる成分の濃度が低い、ことがあげられる。これらの特徴は、熱水の化学組成が海水由来の熱水と岩石の高温反応に支配されている、という従来のモデルで説明できる。すなわち、Caに富む特徴は伊豆小笠原弧の火山岩が低~中アルカリであることを反映しており、NH4の濃度が低いことは陸源有機物がほとんどないことを反映している。講演では金属元素や微量元素の濃度についても検討し、鉱床の化学的特徴との関連について議論する。