日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-RD 資源・鉱床・資源探査

[S-RD45_28PM1] 資源地質学の新展開: 地球環境変動と元素濃集

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 415 (4F)

コンビーナ:*星野 美保子((独)産業技術総合研究所)、山岡 香子(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、野崎 達生(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)、高橋 亮平(秋田大学大学院工学資源学研究科)、座長:山岡 香子(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、野崎 達生(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)

15:30 〜 15:45

[SRD45-05] 沈み込み帯における水銀鉱床形成と有機鉱物産出の関連性

*越後 拓也1 (1.滋賀大学教育学部)

キーワード:水銀鉱床, 有機鉱物, 沈み込み帯, 多環芳香族炭化水素

炭化水素分子や有機酸イオンなどの炭素-炭素結合を有する構造ユニットからなる鉱物群は、有機鉱物 (organic minerals) と呼ばれ、これまでに45種類の鉱物種が報告されている (Gaines et al. 1996, Bojar et al. 2010)。有機鉱物の中でも、様々な金属イオンとシュウ酸やクエン酸などの有機酸イオンが結びついたものはイオン性有機鉱物に分類され、アミドやキノンなどの有機分子が分子間力によって結びついているものは分子性有機鉱物として分類される (Echigo and Kimata 2010)。現在、27種類のイオン性有機鉱物と18種類の分子性有機鉱物が知られており、海底堆積物や石灰岩コンクリーション、石炭などの有機物に富む環境で続成作用によって生成したものが広く産出する。しかし、有機鉱物の中には、後述するカーパタイトやイドリアライトのように、熱水性水銀鉱床にのみ産出するものも存在する。本研究では、このような水銀鉱床に産出する有機鉱物および有機物に焦点を当て、鉱床の形成機構と有機物の挙動の関連性を考察することを目的とする。カーパタイト (karpatite: C24H12) およびイドリアライト (idrialite: C22H14) はいずれも分子性有機鉱物に分類され、カーパタイトは6つのベンゼン環が環状に連結したコロネン (coronene: C24H12) の分子結晶であり、イドリアライトは5つのベンゼン環が直鎖状に連結したピセン (picene: C22H14) の分子結晶である。コロネンやピセンのように、複数のベンゼン環が重合した化合物は多環芳香族炭化水素 (polycyclic aromatic hydrocarbon: PAHs) と呼ばれ、河川水や土壌、堆積岩などに広く存在する安定性の高い有機化合物である。なお、PAHsを主成分とする有機鉱物はこれまでに8種類が知られており、分子性有機鉱物の中で最も大きい鉱物グループを形成している。前述したように、カーパタイトはウクライナのTrans-Carpathia (Piotrovskii 1955)、カリフォルニア州のSan Benito (Murdoch and Geissman 1967)、カムチャッカ半島のTamvatnei (Gorchakov et al. 1981)といった大規模な水銀鉱床における産出が報告されている。イドリアライトも同様に、スロベニアのIdrija (Dumas 1832) とカリフォルニア州のSkaggs Springs (Wright and Allen 1930) という、大規模な水銀鉱床での産出が報告されているのみであり、他の有機鉱物のように続生作用で結晶化したとは考え難く、水銀鉱床を形成した熱水活動の影響で生成した鉱物と考えられる。これらの有機鉱物が産出する水銀鉱床の共通点として、形成年代が新第三紀と比較的新しい点と、プレートの沈み込みに伴う火山活動で形成された浅熱性熱水鉱床である点が挙げられる。これらの特徴を有する水銀鉱床は日本列島にも存在しており、例えば、北海道のイトムカ鉱山では、形成年代や鉱床の形成機構が類似していることに加え、ケロジェン様の固相有機物が水銀鉱石から発見されている (越後ら 2007)。このように、テクトニクス場-地質年代-鉱床の形成機構が共通する水銀鉱床に有機鉱物もしくは有機物が発見されていることは、沈み込み帯における水銀鉱床の形成と有機物の挙動に深い関連があることを示唆している。