日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS23_1PM2] 強震動・地震災害

2014年5月1日(木) 16:15 〜 17:45 211 (2F)

コンビーナ:*元木 健太郎(小堀鐸二研究所)、座長:元木 健太郎(小堀鐸二研究所)

16:45 〜 17:00

[SSS23-24] 東日本大震災に伴う死者の年令依存性(4) 乳幼児・高令者の死亡率は常に高いのか?

*太田 裕1小山 真紀2 (1.東濃地震科研、2.京大院工学研究科)

キーワード:東日本大震災, 死者, 年令依存性, 余命特性

1.前承け今までの調査・研究を通じて,地震(津波)に伴う死者の年令依存特性が意外に多様であることを明らかにしてきた.その一方で特筆すべきパタ-ンが2つあることも判った.すなわち,横軸に年令を右に向けて昇順にとり,縦軸を死亡率とした座標上でみた場合,その一つは英語大文字のU字型であり,他の一つはやはり大文字のJ字型である.特に,2011年東日本大震災においては後者,すなわちJ字型となる地域が多いことを確認した.そうだとすると,災害弱者といわれる乳幼児の死亡率が高令者に比べて格段に低いこととなり,このままでは一寸理解し難い.そこで,本論ではこの問題に注目し,2つの異なる視点から考察した. 2.平常年死亡率との対比から  年令別の死亡率を比較する方法の一つとして,平常年の人口10万人当りの年令別死亡率と災害等異常時のそれを比較する方法が提案されている[尾崎,2012].この方法の自然の発展として,『ある地域で地震等の災害に起因して発生した死者総数と同数の死者を平常時1年間に齎すような仮想人口集団を考え,この集団による年令別死者数との対比を試みるという方法がある.この観点から,東北3県(岩手,宮城,福島県)を対象にそれぞれで相当人口と年間相当死者数を算定し,震災に伴う死者との対比を試みた.その結果,今までのように年令別死者の存在比を単純にみるだけでは判然としなかった乳幼児とか若年層の死亡率が相当際立って見えるようになった.その一方で,J字型パターンにおいて高令者側で目立っていた死亡率が平常時のそれよりも低いことが見出された.3. 余命年数損失の視点から  この問題を今一つ違った視点で捉えてみる.いうまでもなく,人命は一様に尊い.しかし,彼らの余命年数を考えると同じ死者でも余命残存年の長い人間の死亡は,-当然有って然るべき生存の年月が剥奪されることに他ならず-乳幼児・若年者ではその損失が特に大きいことを意味する.このような視点から,余命残存年数を重み付け要素とした上で災害時死亡に伴う年令別の余命年令の損失量をみることが出来る.なお,ここで平均余命が問題となるが,これは0歳児のそれに他ならず,わが国では(男女を一体的にみると)80余歳である.しかし,現に100歳以上の生存者も多いことから,積算に際してはこの平均余命よりはかなり大きな値を考える方が妥当であろう.ここではこれを余命残存年数とし,(100-当該年令)mを重み係数として採用した.ここに,べき乗指数(m)は任意量であるが,m=1~2の間で幾つか変えて試算した.その結果,程度の差はあれ,余命残存特性量をみることで,乳幼児等若年層においてその損失が際立って大きいことを確認した.4. 終りに  従来のように単純に死者発生率を年令別の存在比でみた場合,J字型の関係が得られたとしても-乳幼児の死亡率が一見低いようにみえたとしても-視点を変えてみることで乳幼児を初めとする若年層側では相当高い死亡率となっていることが,今回の試算で明瞭になった.また,今回の結果は,先に得たU字型分布についてもさらに立ち入った考察が必要なことを示唆している.文献等1)尾崎,地震災害時および災害後の健康被害,厚生の指標,59,2012.(志垣;私信).2)太田・小山,2011年東日本大震災に伴う人間被害の激甚性(2) 2013年春JpGU大会. 3)太田・小山,同上(3) ,2013年秋地震学会. 4)小山他,東北地方太平洋沖地震における浸水状況を考慮した市町村別・年齢階級別死者発生状況,土木論文集,64,地震工学,32,2012.