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[SSS23-P11] 超高密度地震観測による宮城県大崎市古川地区の地盤震動特性の評価
キーワード:地盤震動, 古川地区, 超高密度地震観測
2011年東北地方太平洋沖地震では太平洋沿岸の津波被害だけでなく,東北地方から関東地方にかけての広い範囲で内陸部でも地震動による被害が発生した.震度6強を観測した宮城県大崎市古川地区では,地震動による建物被害,液状化被害が顕著であったことが報告されている(Goto and Morikawa, 2012など).地区内でも被害の顕著な地域は限定的であったため,地盤震動特性の違いによる影響が考えられていた.そこで,古川地区内の地盤震動特性を評価する事を目的として,同地区内で超高密度地震観測を展開することにした(Goto et al., 2012).
2011年9月に観測を開始して以降,観測点数を徐々に増やしながら観測を継続し,2014年2月現在では36点が稼動している.観測網は古川地区市街地を中心として東西2km,南北3kmのエリアをカバーしており,従来の高密度地震観測と比べても1オーダー密な観測を実現している.センサーにはITK-002を採用し,常時接続回線を利用したリアルタイム連続観測を実現している.イベント記録は,連続記録からポストトリガーで切り出して処理しており,2014年2月現在で92イベントの記録を公開している.
地震記録の水平/水平スペクトル比を利用して各観測点直下の地盤構造を推定したところ,工学的基盤までの表層厚さは対象地区内で10-30mほどであり,地震動による被害の顕著であった地域で深い傾向にあった(稲谷他,2013).これは,重力探査による基盤深さの推定結果などとも整合した結果であるため,古川地区では地盤震動特性が空間的に変化している傾向を明らかにした.また,PGA,PGV,SI,計測震度といった各種地震動指標の大小を観測点毎に分析したところ,古川地区ではPGVと計測震度で似た傾向があること,被害の顕著であった地域でいずれの値も大きくなる傾向にあることが確認された.ただし,地震動指標の増幅度を反映すると考えられる空間平均からの偏差はイベント毎に大きくばらつくため,有意に揺れやすいかといった統計的な議論が必要である事も示唆している.
本地震観測では古川地区在住のボランティアの方の自宅や事務所に地震計を設置しているため,地震観測で得られた震度の情報やリアルタイム波形を提供して,その貢献に対するフィードバックを実施していることも特徴である.2014年3月をもって研究者主導の地震観測プロジェクトを終了するが,地域に根ざした地震情報の利活用という目的で地域コミュニティをベースとした枠組みでの観測継続を試みている.
参考文献
大崎市古川高密度地震観測プロジェクト:http://sn.catfish.dpri.kyoto-u.ac.jp/
Goto and Morikawa: Ground motion characteristics during the 2011 off the Pacific coast of Tohoku earthquake, Soils and Foundations, 52(5), 769-779, 2012.
Goto, Morikawa, Inatani, Ogura, Tokue, Zhang, Iwasaki, Araki, Sawada and Zerva: Very dense seismic array observations in Furukawa district, Japan, Seism. Res. Lett., 83(5), 765-774, 2012.
稲谷昌之,後藤浩之,盛川仁,小倉祐美子,徳江聡,Xin-rui Zhang,岩崎政浩,荒木正之,澤田純男,Aspasia Zerva:大崎市古川高密度地震観測を利用した表層地盤構造の推定,土木学会論文集A1,69(4),I_758-766,2013.
2011年9月に観測を開始して以降,観測点数を徐々に増やしながら観測を継続し,2014年2月現在では36点が稼動している.観測網は古川地区市街地を中心として東西2km,南北3kmのエリアをカバーしており,従来の高密度地震観測と比べても1オーダー密な観測を実現している.センサーにはITK-002を採用し,常時接続回線を利用したリアルタイム連続観測を実現している.イベント記録は,連続記録からポストトリガーで切り出して処理しており,2014年2月現在で92イベントの記録を公開している.
地震記録の水平/水平スペクトル比を利用して各観測点直下の地盤構造を推定したところ,工学的基盤までの表層厚さは対象地区内で10-30mほどであり,地震動による被害の顕著であった地域で深い傾向にあった(稲谷他,2013).これは,重力探査による基盤深さの推定結果などとも整合した結果であるため,古川地区では地盤震動特性が空間的に変化している傾向を明らかにした.また,PGA,PGV,SI,計測震度といった各種地震動指標の大小を観測点毎に分析したところ,古川地区ではPGVと計測震度で似た傾向があること,被害の顕著であった地域でいずれの値も大きくなる傾向にあることが確認された.ただし,地震動指標の増幅度を反映すると考えられる空間平均からの偏差はイベント毎に大きくばらつくため,有意に揺れやすいかといった統計的な議論が必要である事も示唆している.
本地震観測では古川地区在住のボランティアの方の自宅や事務所に地震計を設置しているため,地震観測で得られた震度の情報やリアルタイム波形を提供して,その貢献に対するフィードバックを実施していることも特徴である.2014年3月をもって研究者主導の地震観測プロジェクトを終了するが,地域に根ざした地震情報の利活用という目的で地域コミュニティをベースとした枠組みでの観測継続を試みている.
参考文献
大崎市古川高密度地震観測プロジェクト:http://sn.catfish.dpri.kyoto-u.ac.jp/
Goto and Morikawa: Ground motion characteristics during the 2011 off the Pacific coast of Tohoku earthquake, Soils and Foundations, 52(5), 769-779, 2012.
Goto, Morikawa, Inatani, Ogura, Tokue, Zhang, Iwasaki, Araki, Sawada and Zerva: Very dense seismic array observations in Furukawa district, Japan, Seism. Res. Lett., 83(5), 765-774, 2012.
稲谷昌之,後藤浩之,盛川仁,小倉祐美子,徳江聡,Xin-rui Zhang,岩崎政浩,荒木正之,澤田純男,Aspasia Zerva:大崎市古川高密度地震観測を利用した表層地盤構造の推定,土木学会論文集A1,69(4),I_758-766,2013.