日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS23_1PO1] 強震動・地震災害

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*元木 健太郎(小堀鐸二研究所)

18:15 〜 19:30

[SSS23-P14] 盆地堆積層内の表面波の伝播-関東平野中央部における局所的な伝播速度の変化-

*武村 俊介1吉本 和生1 (1.横浜市立大学)

キーワード:長周期地震動, 盆地構造, 地震動シミュレーション, 表面波

観測波形に見られる特徴
2013年2月25日に栃木県北部で起きた地震による関東平野内で周期4-8秒の表面波の伝播の特徴を調べたところ、埼玉県南部の岩槻周辺のわずか20 kmの範囲でLove波の伝播速度が0.4-0.8 km/sと大きく変化していることが明らかとなった。この特徴は他の地震(例えば新潟県中越地方の地震)でも観測されており、関東平野中央部の狭い領域で堆積層内の速度構造または地震基盤構造が大きく変化していることが原因と考えられる。

3次元差分法による地震動シミュレーション
比較的単純な地震基盤構造で堆積層内の速度構造は指数関数型の速度勾配を持つ構造(Ravve and Koren, 2006; Yoshimoto and Takemura, 2014)を仮定して、3次元差分法による地震動シミュレーションを行い、Love波の伝播特性が地震基盤構造と堆積層内の速度構造により、どのように変化するかを調べた。
シミュレーションの結果、Love波の伝播速度は深さ2 km以深の地震基盤構造よりも1.5 km以浅の浅部S波速度に非常に敏感であり、浅部S波速度構造の違いで観測される伝播速度の違いが説明できることが明らかとなった。4-8秒程度のLove波の伝播速度が浅部不均質のみで決まることはセンシティビティ解析からも明らかであり、埼玉県南部で見られた狭い範囲でのLove波の伝播速度の変化は地表付近のS波速度の違いによるものと考えられる。

2013年栃木県北部の地震の地震動シミュレーション
表面波の伝播速度解析の結果と関東平野内の14点の中深層観測井におけるVSP調査(山水、1996; Yamamizu, 2004)の結果を元に、堆積層内のS波速度構造モデルを構築した。構築した速度構造の妥当性を確認するために、栃木県北部の地震の地震動シミュレーションを行った。堆積層内以外の速度構造については、JIVSM(Koketsu et al., 2008)を用いた。
地震動シミュレーションの結果、構築した速度構造モデルを用いることで埼玉県南部における表面波の伝播速度および振幅、そして関東平野全域における0.125-0.25 HzのPGVの特徴を再現することができた。


謝辞
防災科学技術研究所のK-NET/KiK-netおよび首都圏強震動総合ネットワークSK-netの波形記録を使用させていただきました。数値シミュレーションには海洋研究開発機構の地球シミュレータを使わせていただきました。