日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS23_1PM2] 強震動・地震災害

2014年5月1日(木) 16:15 〜 17:45 211 (2F)

コンビーナ:*元木 健太郎(小堀鐸二研究所)、座長:元木 健太郎(小堀鐸二研究所)

17:00 〜 17:15

[SSS23-P15_PG] 付加体の有無を考慮した関東平野の長周期地震動シミュレーション

ポスター講演3分口頭発表枠

*郭 雨佳1纐纈 一起1三宅 弘恵1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:長周期地震動, 付加体, 南海トラフ, 関東平野

プレート境界地震の場合、震源付近で生成された周期の長い地震波は平野や盆地の直下にある厚い堆積層に入り、そこで大きく増幅される。このような長周期地震動は大規模構造物などに大きな被害をもたらしている。例えば、2003年十勝沖地震 (Mw 8.3) の際、震源から約250 km離れた、厚い堆積層の上に位置する苫小牧市において周期7-8秒の地震動が卓越し、それによって大型の石油タンク2基がスロッシングを起こし火災が発生した (Koketsu et al., 2005)。2011年東北地方太平洋沖地震 (Mw 9.0) においても、長周期地震動が震源から離れた大阪平野や関東平野で観測され、一部の高層建築物で揺れが10分程度継続するなど、被害が出た (JMA, 2011)。
また、近い将来南海トラフでの発生が懸念されるプレート境界地震でも、関東平野・濃尾平野・大阪平野などにおいて長周期地震動の発生が予想されている (Furumura et al., 2008)。日本海溝または千島海溝と異なり、南海トラフではその陸側に厚さ数kmの比較的軟弱な付加体が発達している。したがって、南海トラフでのプレート境界地震による長周期地震動を評価する際、地震波の伝播経路にあたる付加体の影響の検討は重要である。Yamada and Iwata (2005) は近畿地方を対象とした長周期地震動シミュレーションを通じて、付加体は直達S波の振幅を抑えるものの、地震動の継続時間を長くするという結論を得ている。本研究では、付加体が伝播経路のみならず関東平野内の長周期地震動に与える影響を調べるため、2004年9月5日19時7分頃に発生した紀伊半島南東沖地震の前震 (Mw 7.1) を用いて長周期地震動シミュレーションを行った。
シミュレーションでは点震源を仮定し、震源パラメータや震源時間関数は Yamada and Iwata (2005) と同様とした。ただし、沈み込むフィリピン海プレートとの対応を取るため、震源の深さは Yamada and Iwata (2005) よりやや浅い約16 kmとした。また、三次元速度構造モデルは全国1次速度構造モデル (Koketsu et al., 2008, 2012) を使用した。シミュレーションではボクセル有限要素法 (Ikegami et al., 2008) を使用し、0.05-0.3 Hzの帯域において破壊開始時刻から6分半の波形を計算した。解析領域はおよそ564 km×198 km×深さ61 kmであり、その外側に幅約54 kmの無反射境界を設けた。計算メッシュの大きさは深さに応じて変化させ、最も細かい所で一辺の長さが175 mの立方体を設定した。南海トラフの付加体の有無による波形の違いを比較するため、付加体にあたるS波速度1.0 km/sの層を3.2 km/sに変換し、付加体が存在しないと仮定した場合のシミュレーションも実施した。
付加体の有無による二種類のシミュレーションの結果、次の結論を得た。付加体ありの三次元速度構造モデルによる波形は付加体なしの場合と比べて、直達波の振幅は小さいが、後続波の振幅はやや大きい傾向にある。この結果は Yamada and Iwata (2005) と整合的である。後続波の振幅が大きくなる原因として、付加体領域内にトラップされた波が絶えずに表面波に変換され、その表面波が関東平野に入射し、関東平野内を伝播する波と重なり合った結果によるものと考えられる。