18:15 〜 19:30
[SSS23-P20] 2013年2月25日に栃木県北部で発生した地震(M 6.3)の震源過程-その2 ~経験的グリーン関数を用いた検討~
キーワード:震源過程, 内陸地殻内地震, 震源近傍, 強震動, 2013栃木県北部地震
◆はじめに
2013年2月25日に栃木県北部でMJ 6.3の地震が発生した.この地震の最大震度は5強であり,震源域が山間部であったことも影響し甚大な被害は報告されていない.しかし,震源近傍のKiK-net観測点(TCGH07,栗山西)の地表地震計では1Gを超える加速度が記録された.このような観測波形は断層極近傍での強震動を考える上で貴重な記録である.その要因を考察するため,筆者は強震記録を使った震源インバージョン解析(引間,2013a)やサイト・伝播特性に関する検討(引間,2013b)を実施してきた.しかし,震源過程解析に関しては十分な精度を有する地下構造モデルを構築することが難しく,理論的グリーン関数を使った解析では観測波形を十分に再現するには至っていない.そこで,今回は震源付近で発生した小地震を経験的グリーン関数として震源インバージョン解析を実施し,震源過程について検討を行った.
◆断層面・解析手順
断層面の設定は引間 (2013a)と同様にした.まず,気象庁一元化データの初動読み取りデータを使い,本震・余震を合わせた2月25日から1週間の震源再決定を行った.震源決定はDouble Difference法[Waldhauser and Ellsworth (2000)]により行い,その際の速度構造は気象庁一元化震源と同じJMA2001を使用した.本震の震源深さは気象庁一元化処理結果による2.8kmよりもやや深い3.5kmとなっている.仮定する断層面は,F-netのメカニズム解をもとに設定した.F-net解はほぼ純粋な横ずれ断層を示しているが,2つの節面のうち余震分布とおおむね一致する北北西-南南東の面(走向:165°, 傾斜:80°)に断層面を設定して解析を行った.
インバージョン解析は理論的グリーン関数を使った時と同様に,マルチタイムウィンドウ法[Yoshida et al. (1996),引間 (2012)]により行う.小断層サイズは経験的グリーン関数とする小地震の規模を考慮し1kmとした.解析にはKiK-netとK-NETの記録を用い,観測された加速度波形に0.03~1.5Hzのバンドパスフィルタを適用し積分した速度波形を使用した.なお,震源極近傍のTCGH07栗山西の波形はインバージョンの際には使用せず,また,解析にはTransverse 成分の波形を使用することを基本とした.
経験的グリーン関数としては,本震と同様の横ずれのメカニズムを有する2月25日 15:26のMw4.0の小地震を使用した.要素とする小地震のS波初動走時を読み取り,断層面を分割した各小断層から観測点に対して計算される走時に合わせて時間シフトした波形をインバージョン解析の際のグリーン関数とした.
◆解析結果
以上の条件で解析を行ったところ,モーメント解放が大きな領域は震源付近の4km×3km程度の狭い範囲に集中しており,主には北側にすべりが拡がるような結果が得られた.この特徴は,引間(2013a)の理論グリーン関数による解析結果と同様の傾向であるが,大きなすべり域がより狭い範囲に集中する結果である.余震の広がりと比べると,地震時すべり域は狭い範囲にとどまっており,これらの対応関係を含めて解析結果に関する考察はさらに検討を継続したい.なお,観測波形の再現は比較的短周期の位相まで良好に行われている.
◆おわりに
本稿では一つの小地震を使った解析結果を示したが,栃木県北部の地震ではこの地震以外にも多くの余震が発生している.発表時には本稿とは別の余震を使用した結果なども示し,経験的グリーン関数を使った震源過程解析の信頼性等についても確認したい.
※ 既往研究に関する文献
引間,2013年2月25日に栃木県北部で発生した地震(MJ 6.3)の震源過程,日本地震学会 2013年秋季大会予稿集,P3?63,2013a.
引間,スペクトルインバージョンを用いた2013年2月栃木県北部地震の震源域におけるサイト・伝播特性に関する検討,日本地震工学会・大会-2013梗概集,335-336,2013b.
2013年2月25日に栃木県北部でMJ 6.3の地震が発生した.この地震の最大震度は5強であり,震源域が山間部であったことも影響し甚大な被害は報告されていない.しかし,震源近傍のKiK-net観測点(TCGH07,栗山西)の地表地震計では1Gを超える加速度が記録された.このような観測波形は断層極近傍での強震動を考える上で貴重な記録である.その要因を考察するため,筆者は強震記録を使った震源インバージョン解析(引間,2013a)やサイト・伝播特性に関する検討(引間,2013b)を実施してきた.しかし,震源過程解析に関しては十分な精度を有する地下構造モデルを構築することが難しく,理論的グリーン関数を使った解析では観測波形を十分に再現するには至っていない.そこで,今回は震源付近で発生した小地震を経験的グリーン関数として震源インバージョン解析を実施し,震源過程について検討を行った.
◆断層面・解析手順
断層面の設定は引間 (2013a)と同様にした.まず,気象庁一元化データの初動読み取りデータを使い,本震・余震を合わせた2月25日から1週間の震源再決定を行った.震源決定はDouble Difference法[Waldhauser and Ellsworth (2000)]により行い,その際の速度構造は気象庁一元化震源と同じJMA2001を使用した.本震の震源深さは気象庁一元化処理結果による2.8kmよりもやや深い3.5kmとなっている.仮定する断層面は,F-netのメカニズム解をもとに設定した.F-net解はほぼ純粋な横ずれ断層を示しているが,2つの節面のうち余震分布とおおむね一致する北北西-南南東の面(走向:165°, 傾斜:80°)に断層面を設定して解析を行った.
インバージョン解析は理論的グリーン関数を使った時と同様に,マルチタイムウィンドウ法[Yoshida et al. (1996),引間 (2012)]により行う.小断層サイズは経験的グリーン関数とする小地震の規模を考慮し1kmとした.解析にはKiK-netとK-NETの記録を用い,観測された加速度波形に0.03~1.5Hzのバンドパスフィルタを適用し積分した速度波形を使用した.なお,震源極近傍のTCGH07栗山西の波形はインバージョンの際には使用せず,また,解析にはTransverse 成分の波形を使用することを基本とした.
経験的グリーン関数としては,本震と同様の横ずれのメカニズムを有する2月25日 15:26のMw4.0の小地震を使用した.要素とする小地震のS波初動走時を読み取り,断層面を分割した各小断層から観測点に対して計算される走時に合わせて時間シフトした波形をインバージョン解析の際のグリーン関数とした.
◆解析結果
以上の条件で解析を行ったところ,モーメント解放が大きな領域は震源付近の4km×3km程度の狭い範囲に集中しており,主には北側にすべりが拡がるような結果が得られた.この特徴は,引間(2013a)の理論グリーン関数による解析結果と同様の傾向であるが,大きなすべり域がより狭い範囲に集中する結果である.余震の広がりと比べると,地震時すべり域は狭い範囲にとどまっており,これらの対応関係を含めて解析結果に関する考察はさらに検討を継続したい.なお,観測波形の再現は比較的短周期の位相まで良好に行われている.
◆おわりに
本稿では一つの小地震を使った解析結果を示したが,栃木県北部の地震ではこの地震以外にも多くの余震が発生している.発表時には本稿とは別の余震を使用した結果なども示し,経験的グリーン関数を使った震源過程解析の信頼性等についても確認したい.
※ 既往研究に関する文献
引間,2013年2月25日に栃木県北部で発生した地震(MJ 6.3)の震源過程,日本地震学会 2013年秋季大会予稿集,P3?63,2013a.
引間,スペクトルインバージョンを用いた2013年2月栃木県北部地震の震源域におけるサイト・伝播特性に関する検討,日本地震工学会・大会-2013梗概集,335-336,2013b.