日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS23_1PO1] 強震動・地震災害

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*元木 健太郎(小堀鐸二研究所)

18:15 〜 19:30

[SSS23-P21] 強震観測記録に基づく2011年長野県北部の地震(Mj 6.7)の震源過程の解明

*芝 良昭1 (1.電力中央研究所)

キーワード:2011年長野県北部地震, 震源過程, 強震動, インバージョン解析, 干渉合成開口レーダー, 背斜構造

2011年3月12日3時59分に発生した長野県北部地震 (M6.7) では,震源近傍の長野県栄村で震度6強が観測された.震源は,新潟―神戸ひずみ集中帯 (Sagiya et al., 2000) に位置し,2004年新潟県中越地震 (M6.8) と1847年善光寺地震の中間の,いわゆる地震空白域に位置する.東北地方太平洋沖地震 (M9.0) の翌日に発生した地震でもあり,同地震の発生後に各地で頻発した誘発地震の一つと考えられる.また震源域付近には十日町断層帯の南端部が位置しているが,特定の既存活断層との関係は明らかでない.震源近傍のK-NET津南 (NIG023) では,EW成分で最大加速度704 galを記録しており,震源のアスペリティ,あるいは強震動生成域(SMGA)との幾何学的な位置関係を明らかにすることは,強震動評価のために重要である.
F-netのメカニズム解によると,この地震は北西―南東圧縮の逆断層の発震機構を持つと考えられる.一方で,この地震では気象庁の一元化震源カタログに基づく余震分布と,防災科学技術研究所の稠密地震観測記録による余震分布が空間的に大きく異なっており,震源域周辺の地盤における著しい不整形性の影響によるものと考えられる.干渉合成開口レーダー(InSAR)の解析結果によれば(例えば中埜・他, 2013),地震時の地殻変動域は防災科技研の余震分布と調和的であり,さらに走向が異なる2枚の断層面が想定され,鉛直変位の不連続性から北部の主断層は南東傾斜,南部の副断層は北西傾斜と示唆される.このため,ここではInSARの地殻変動分布と防災科技研の余震分布に整合的な,傾斜方向の異なる2枚断層面モデルを設定し,震源インバージョン解析を実施した.
解析の結果得られた断層面上のすべり分布モデルからは,モーメント解放量の大きいアスペリティが破壊開始点から約7 km離れた領域に推定され,その大きさは5㎞×10㎞程度である.また破壊開始点周辺にも二次的なアスペリティが認められる.地震モーメントの約85%は主断層から放出されており,副断層からの寄与は小さいことから,InSARにみられた副断層の変位は,本震の直後に発生したM5.9の余震によるものである可能性がある.本検討で推定された主アスペリティの直上には背斜構造が存在しており,今回の震源運動は背斜構造を成長させる方向となる.