18:15 〜 19:30
[SSS24-P06] 房総半島沖のプレート間すべりによる応力変化と地震活動の関係(その2)
キーワード:房総半島, スロースリップイベント, b値, 応力, 時間変化
弘瀬・前田 (2012, 2013, JpGU; 2013, SSJ)は,房総半島沖のスロースリップイベント(以下,SSE)に伴う応力場の変化と地震活動度およびb値とに時空間的な相関がみられることを指摘した.例えば,地震活動についてみると,(S-1) SSE時に活発化,(S-2) 2002年および2007年SSE前に静穏化,(S-3) 2007年SSEを境に発生率が増加,という3つの特徴が挙げられる.次にG-R則のb値についてみると,(b-1) SSE中および直後に小さくなる,(b-2) 次のSSEまで徐々に大きくなる,というサイクルを繰り返している.
ここで注目している地震活動域のすべり欠損レートはほぼゼロである.すなわち,安定的に滑っているプレート境界面に小さなアスペリティが分布しているため,地震が定常的に発生していると考えられる.一方,SSEの発生に伴って地震活動域のプレート間すべりレートも増加する.そして,歪蓄積レートが高くなるため,応力の増加率も高くなる.ここで,室内実験から得られた「応力の増加率が高い=地震発生率が高い(Dieterich, 1994, JGR)」または「応力とG-R則のb値は逆相関(Scholz, 1968, BSSA)」という結果を考慮すると,SSE時に地震発生率が高くなり,同時にb値は低くなると予想される.観測結果はこの予想と整合している.
具体的にみてみると,SSE時(S-1, b-1)では,SSEの中心部は勿論のこと,SSEの縁に位置する地震活動域のプレート間すべりレートもSSE間のそれより高くなる(GNSSデータから推定されたすべり欠損およびSSE分布より確認できる).そして,歪蓄積レートが高くなるため,応力の増加率も高くなる.それにより地震発生率が高くなり,同時にb値が低くなる.一方,SSE間(S-2, b-2)では,プレート間すべりレートがSSE時より低下するため,上記と逆の現象となり,地震活動の静穏化が現れ,同時にb値は高くなる.2007年SSEを境に発生率が増加(S-3)については,2007年SSE前後ですべり欠損分布に大きな違いはない.この状況下で地震発生率に変化が現れるためには, Dieterich (1994)の枠組みで考えると,すべり欠損レートは変わらず,定常すべりレートだけが高くなればよい(定常すべりレートの値がいくつであろうとすべり欠損には影響しない(Savage, 1983, JGR)).つまり,プレート間カップリング率(すべり欠損レート/定常すべりレート)の低下を意味する.このように,地震活動やb値の時間変化は,プレート間すべりレートの擾乱で包括的に説明できる.
ところで,房総SSEは概ね4-7年間隔で発生していたが,2011年末および2014年初めにも発生し,直近2回の発生間隔は2年程度とこれまでに比べて極端に短い.発生間隔が短縮した主な原因は2011年東北地方太平洋沖地震(以下,東北沖地震)の影響によるものと考えられるが,これまでにみられた特徴が2014年SSEでもみられるかどうか,期間を延長して解析した.その結果,(S-1) SSE時の地震活動の活発化,(S-3) 2007年以降の高い地震発生率,(b-1, b-2) b値の時間変化はこれまでと同じ傾向を示した.一方,東北沖地震の影響が依然強く,(S-2) SSE前の地震活動の静穏化については認められなかった.
ここで注目している地震活動域のすべり欠損レートはほぼゼロである.すなわち,安定的に滑っているプレート境界面に小さなアスペリティが分布しているため,地震が定常的に発生していると考えられる.一方,SSEの発生に伴って地震活動域のプレート間すべりレートも増加する.そして,歪蓄積レートが高くなるため,応力の増加率も高くなる.ここで,室内実験から得られた「応力の増加率が高い=地震発生率が高い(Dieterich, 1994, JGR)」または「応力とG-R則のb値は逆相関(Scholz, 1968, BSSA)」という結果を考慮すると,SSE時に地震発生率が高くなり,同時にb値は低くなると予想される.観測結果はこの予想と整合している.
具体的にみてみると,SSE時(S-1, b-1)では,SSEの中心部は勿論のこと,SSEの縁に位置する地震活動域のプレート間すべりレートもSSE間のそれより高くなる(GNSSデータから推定されたすべり欠損およびSSE分布より確認できる).そして,歪蓄積レートが高くなるため,応力の増加率も高くなる.それにより地震発生率が高くなり,同時にb値が低くなる.一方,SSE間(S-2, b-2)では,プレート間すべりレートがSSE時より低下するため,上記と逆の現象となり,地震活動の静穏化が現れ,同時にb値は高くなる.2007年SSEを境に発生率が増加(S-3)については,2007年SSE前後ですべり欠損分布に大きな違いはない.この状況下で地震発生率に変化が現れるためには, Dieterich (1994)の枠組みで考えると,すべり欠損レートは変わらず,定常すべりレートだけが高くなればよい(定常すべりレートの値がいくつであろうとすべり欠損には影響しない(Savage, 1983, JGR)).つまり,プレート間カップリング率(すべり欠損レート/定常すべりレート)の低下を意味する.このように,地震活動やb値の時間変化は,プレート間すべりレートの擾乱で包括的に説明できる.
ところで,房総SSEは概ね4-7年間隔で発生していたが,2011年末および2014年初めにも発生し,直近2回の発生間隔は2年程度とこれまでに比べて極端に短い.発生間隔が短縮した主な原因は2011年東北地方太平洋沖地震(以下,東北沖地震)の影響によるものと考えられるが,これまでにみられた特徴が2014年SSEでもみられるかどうか,期間を延長して解析した.その結果,(S-1) SSE時の地震活動の活発化,(S-3) 2007年以降の高い地震発生率,(b-1, b-2) b値の時間変化はこれまでと同じ傾向を示した.一方,東北沖地震の影響が依然強く,(S-2) SSE前の地震活動の静穏化については認められなかった.