日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS25_2PM1] 地震予知

2014年5月2日(金) 14:15 〜 16:00 312 (3F)

コンビーナ:*竹内 希(東京大学地震研究所)、座長:藤原 広行(防災科学技術研究所)、吉川 澄夫(気象庁気象研究所)

14:30 〜 14:45

[SSS25-02] 地震発生場の構造と状態の実用的常時能動監視観測方法の開発

*熊澤 峰夫1東原 紘道2永井 亨1 (1.名古屋大学、2.東京大学)

キーワード:音響周波数コム, アクロス, 構造推定

アクロス(精密制御定常信号システム)を使う音響周波数コム技術(AFC)は、地下の構造と状態の能動的常時監視観測法として、1994以来、名古屋大学(熊澤ら)と地震研究所(東原ら)で、開発研究がおこなわれてきた。現時点では、岐阜、静岡、愛知、兵庫、鹿児島の各県で経常的な観測が行われている。「アクロスは、地震予知を進める上で欠かせない重要な要素の一つ」だが「装置の安定性や解析方法など解決すべき課題は多い」(地震予知の科学:日本地震学会地震予知検討委員会編2007 東大出版会)。しかし、地震学における「この課題」の研究には、鎌と鋤が必要なのであり、現状の茶碗と箸では本来のニーズに応えられまい。(1) 従来のアクロスでは、実効的には小さな質量M(~100kg)の相対的には大きな振動振幅u (~0.1m)の運動(実際は偏心質量の回転)を使って、シングルフォースF (ベクトル:モーメントテンソルでない)で、極めて精密な周期的周波数変調(周波数コム)信号を励起する。この力の信号F = M d2u/dt2 = - ω2 (Mu)         (この初等的な式の意味は多元的で深淵である!)は、岩盤カップラと称する大きな送信用アンテナ (波の送信効率はこの寸法に比例。東濃送信所では、数mで~100 tonの鉄筋コンクリートブロック)を介して地中に弾性波を送信する。上式が示すように送信信号のレベルは周波数の2乗に比例して、低周波数では小さくなる。これまでに実現した実用的送信周波数は5Hz程度までである。ここで提案する新機軸は、Mを従来よりも100~10000倍大きくして、その変位uを回転でなく、直線振動で与えて、ωを1/10~1/100倍に下げる。これには大きな岩盤カップラを慣性質量Mに活用して実現する。送信装置のエネルギ損失は格段に小さい。上で説明した新機軸の送信方式の原理と方法を現実的だと判断して、その開拓に着手したので、その中間報告をする。(2) 1 Hz 以下の低い周波数領域でのアクロスの使用は、実用的な日本列島常時監視システムを実現する。こうして得る高精度の周波数領域データに整合する的確なデータ解析法開発も推進する。アクロスで得るのは、励起点eと観測点dの間の周波数領域の伝達関数Hde(ω) (時間領域ではグリーン関数)である。これは正規モード群(複素固有値ωk: k=1, 2, ...で指定)の固有関数の2点(x=d, e)における値の積に比例する物理量である。したがってどこかにAFCの送信点があり、特定地域に高密度の観測点アレイがあれば、送信信号とは独立に、その地域と近傍の構造情報(正規モード群間の多数の相互相関関数群)を極めて高い精度で取得できる。そのデータ解析に最適で必須の順逆問題最適化の数理(PANWAVE)のその後の発展も報告する。これは「いわゆる干渉法interferometry」の精度を飛躍的に向上させるものだ。(3) この研究開発で直ちに成果が得られるのは、耐震工学、地盤工学など急を要する減災対策である。地震や火山の予測や制御の課題が現実的なWP(well-posed)問題になるのは、場の構造とそこの物質の構造敏感特性の長期間にわたる精密な監視観測の愚直な積み上げと、さらに物質の実験的理論的な基礎研究の連携という基礎ができてからであると考えられる。