18:15 〜 19:30
[SSS26-P12] P波及びS波地震波干渉法より推定される関東堆積盆地内の地震波速度の深さ変化
キーワード:地震波干渉法, 関東堆積盆地, 堆積層構造, 地震波速度構造
1.はじめに
関東平野における長周期地震動の発生を正確に評価するためには,関東堆積盆地内の新第三系以降の堆積層の地震波速度の深さ変化を詳細に明らかにする必要がある.しかしながら,深層井でのVSP法調査などを除いて,P波とS波を同時に解析対象として,それらの速度の関係を調べた研究の数は限られる.本報告では,堆積層内を伝播するP波及びS波の地表-地震基盤間の走時を地震波干渉法によって測定し,この測定結果に基づいて推定したP波速度とS波速度の関係の深さ依存性などについて紹介する.
2.データと解析
首都圏地震観測網(MeSO-net)の地震観測点で得られた160の近地地震の波形記録を解析した.地震波干渉法では,各観測点の加速度波形を変位波形に変換し,S波については初動から10秒間のSH成分,P波については初動から5秒間の上下成分について自己相関関数を求めた後に,重合処理により地盤のレスポンス関数(地盤の地震波反射応答関数)を評価した.さらに,各観測点で得られたレスポンス関数において地震基盤の反射波の波相を検出し,堆積層内を伝播するP波及びS波の地表-地震基盤間の往復走時を測定した.
3.結果
上記のデータ解析により,関東堆積盆地内の266地点において,P波及びS波の地表-地震基盤間の往復走時(以下,それぞれTpとTsとする)の測定に成功した.これまでS波地震波干渉法に関しては多くの研究報告があるが,本研究の結果は,大深度地盤構造探査手法としてのP波地震波干渉法の有効性を示すものであると言える.測定された地表-地震基盤間の往復走時の範囲は,Tpで0.5~4.0 s 程度,Tsで2.0~8.0 s 程度であった.全ての測定値を用いてTpとTsの関係をグラフ化すると,きれいな右肩上がりの比例関係が確認された.グラフの傾きは,左端で4程度であるが,Tpの増大とともに徐々に緩やかになり,右端では2弱程度になる.興味深いことに,このTpとTsの関係は,岩槻の深層井におけるVSP法調査(Yamamizu 2004)の測定結果に極めて類似するものであった.このことは,岩槻における地震波速度構造を関東堆積盆地の標準的な構造であると指摘したYoshimoto and Takemura (2014)の報告と整合的である.この結果をもとに,今回の測定結果を解釈すると, 堆積層のP波速度(Vp)とS波速度(Vs)の比は,深さ約0.5 km以浅では平均値として4程度であるが,深さとともに漸減し,深さ約2.0 km以深では2弱程度になると言える.
謝辞
本研究では,首都圏地震観測網の地震波形記録を使用しました.本研究は,東京大学地震研究所共同研究プログラムの援助を受けました.ここに記して感謝します.
関東平野における長周期地震動の発生を正確に評価するためには,関東堆積盆地内の新第三系以降の堆積層の地震波速度の深さ変化を詳細に明らかにする必要がある.しかしながら,深層井でのVSP法調査などを除いて,P波とS波を同時に解析対象として,それらの速度の関係を調べた研究の数は限られる.本報告では,堆積層内を伝播するP波及びS波の地表-地震基盤間の走時を地震波干渉法によって測定し,この測定結果に基づいて推定したP波速度とS波速度の関係の深さ依存性などについて紹介する.
2.データと解析
首都圏地震観測網(MeSO-net)の地震観測点で得られた160の近地地震の波形記録を解析した.地震波干渉法では,各観測点の加速度波形を変位波形に変換し,S波については初動から10秒間のSH成分,P波については初動から5秒間の上下成分について自己相関関数を求めた後に,重合処理により地盤のレスポンス関数(地盤の地震波反射応答関数)を評価した.さらに,各観測点で得られたレスポンス関数において地震基盤の反射波の波相を検出し,堆積層内を伝播するP波及びS波の地表-地震基盤間の往復走時を測定した.
3.結果
上記のデータ解析により,関東堆積盆地内の266地点において,P波及びS波の地表-地震基盤間の往復走時(以下,それぞれTpとTsとする)の測定に成功した.これまでS波地震波干渉法に関しては多くの研究報告があるが,本研究の結果は,大深度地盤構造探査手法としてのP波地震波干渉法の有効性を示すものであると言える.測定された地表-地震基盤間の往復走時の範囲は,Tpで0.5~4.0 s 程度,Tsで2.0~8.0 s 程度であった.全ての測定値を用いてTpとTsの関係をグラフ化すると,きれいな右肩上がりの比例関係が確認された.グラフの傾きは,左端で4程度であるが,Tpの増大とともに徐々に緩やかになり,右端では2弱程度になる.興味深いことに,このTpとTsの関係は,岩槻の深層井におけるVSP法調査(Yamamizu 2004)の測定結果に極めて類似するものであった.このことは,岩槻における地震波速度構造を関東堆積盆地の標準的な構造であると指摘したYoshimoto and Takemura (2014)の報告と整合的である.この結果をもとに,今回の測定結果を解釈すると, 堆積層のP波速度(Vp)とS波速度(Vs)の比は,深さ約0.5 km以浅では平均値として4程度であるが,深さとともに漸減し,深さ約2.0 km以深では2弱程度になると言える.
謝辞
本研究では,首都圏地震観測網の地震波形記録を使用しました.本研究は,東京大学地震研究所共同研究プログラムの援助を受けました.ここに記して感謝します.