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[SSS27-04] 箱根火山の火山活動に伴う雑微動による自己相関関数の時間変化
キーワード:自己相関関数, 火山活動, 箱根火山
1.はじめに 雑微動の自己相関関数(ACF)の時間変化は、地殻構造の時間変化をモニタリングする有用なツールとなりうる.大地震の体積変化あるいは、強震動による表層地盤の速度変化の検出のみならず、地熱地帯や火山地域における群発地震活動に伴う速度変化の検出例も報告されている(例えば、Wegler et al., 2009;Maeda et al., 2010;Ueno et al., 2012).本研究では、活発な地震活動が頻発する箱根火山においてACFの時間変化を求め、火山活動との関係について調査した.2.箱根火山の群発地震活動 箱根火山は伊豆衝突帯北部に位置し、周囲を直径約15kmの外輪山に囲まれる第四紀の活火山である.箱根カルデラ内では、群発地震が頻繁に発生しており、近年では2001年、2006年、2008~2009年、2011年及び2013年に特に活発な群発地震活動が発生した.このうち、2011年東北地方太平洋沖地震直後に発生した地震活動を除く、それぞれの地震活動に対応して、周辺の国土地理院GNSS観測点において山体の膨張を示す地殻変動が観測された.こうした地殻変動は、カルデラ下深さ10km付近における、球状圧力源の変動もしくはダイクより説明することができる(例えば、代田ほか、2009;原田ほか、2009).加えて、2001年及び2013年の地震活動時においては、カルデラ内に設置されている傾斜計にも地殻変動が観測され、これらの変動源として浅部での開口クラックが推定されている(例えば、代田ほか、2009;宮岡ほか、2013).深部のダイクについてはマグマの貫入もしくは体積増加、浅部の開口クラックについては熱水の貫入を反映したものとして考えられている(代田ほか、2009).マグマや熱水の貫入や体積増加に伴い、その周辺の速度構造が変化すると予想されるため、ACFにおいても変化が生じることが期待される.3.データ及び手法 箱根カルデラ内及び周辺に設置された、神奈川県温泉地学研究所、防災科学技術研究所Hi-net、気象庁観測点における連続地震波形データを解析に使用した.2013年1月~3月の活発な地震活動に関係した速度変化の検出をターゲットとし、2012年1月から2013年12月までの2年間の波形データを使用した.上下動成分の連続地震波形データに1-3Hzのバンドパスフィルター処理を施すとともに、振幅値を1bitに規格化した.1時間毎のACFを計算し、それを24時間分足し合わせ1日毎のACFを求めた.さらに、より安定したACFを得るために、1週間分のACFをスタッキングした.このようにして得られた1日毎の ACFに対して、時間遅れ4-15秒に見られる波群の変化が観測点周辺の速度構造の微小な変化によるものと仮定して、その速度変化量を全期間のACFのスタッキングからもとめたリファレンスACFとの比較により求めた(例えば、Wegler et al., 2009).3.結果と解釈 カルデラ内に設置された観測点のうち、駒ケ岳観測点と二の平観測点において、群発地震活動に先行して2012年12月上旬ごろから緩やかな速度低下が始まり、2013年6月頃にかけて0.4%~0.6%低下した.カルデラ内の大涌谷噴気地帯近傍に設置されている大涌谷観測点では、地震活動が活発化した1月下旬頃から0.8%程度の急激な速度低下が見られた.それ以外の観測点については、変動幅の大きな速度変化が常時から生じており、一連の活動に関連する速度変化は検出できなかった.駒ケ岳観測点と二の平観測点の速度低下については、箱根火山周辺の国土地理院GNSSデータによる山体の膨張を示す基線長変化の開始時期と一致している.大涌谷観測点の速度変化については、地震活動の活発化時期並びに傾斜変動の開始時期直後から始まっている.こうしたことから、火山活動やそれに伴う地殻変動変化に伴い、ACFが時間変化した可能性が示唆される.ACFの時間変化の原因には地殻内へのマグマなどの貫入(例えば、Maeda et al., 2010)やマグマ貫入に伴う開口クラックで生じたひずみ変化によるもの(例えば、Ueno et al., 2012)が考えられる.今後は、地殻変動源によるひずみ分布やACFのラグ時間毎の位相遅れを調べることにより、速度変化の原因についてより詳細な議論を行う予定である.謝辞本研究では、防災科学技術研究所Hi-net、気象庁観測点の地震波形データを使用させていただきました.東京大学地震研究所前田拓人博士から自己相関関数の計算に関するアドバイスをいただきました.