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[SSS27-05] 2011年東北地方太平洋沖地震における津波の分散性と非線形性
キーワード:津波, 分散, 非線形, 東北地方太平洋沖地震
津波の伝播過程の理解を深めることは,信頼度の高い震源過程推定や津波予測に不可欠な高精度グリーン関数を得るためだけで無く,波動現象の基礎研究として興味深い.本研究では,波動現象としての2011年東北地方太平洋沖地震津波(以後,東北地震津波)に注目し,波の分散性と非線形性が伝播過程で果たした役割を解明することを目的とする.まず,高分解能の津波波源モデルと非線形分散波方程式に基づく差分シミュレーションによって,沿岸・沖合で実際に観測された津波波形記録,そして,仙台平野の浸水域を忠実に再現した.これにより,使用する津波波源と伝播方程式の妥当性を確認した.さらに,非線形分散波方程式の代わりに,分散現象をモデル化できない非線形長波方程式,そして,非線形現象をモデル化できない線形分散波方程式を使用し,シミュレーション結果と比較することで,東北地震津波における分散性と非線形性の影響を評価した.その結果,以下の知見を得た.太平洋を伝播する津波のモデル化においては分散性を考慮することが非常に重要であり,分散性を考慮しない場合,津波最大波高分布を過大評価する.実際,外洋(水深>1000 m)において最大波高(>2m)を得た観測点の津波波形記録を正確に再現するには分散性を考慮する必要があった.非線形現象は沿岸浅部での津波の振る舞いを再現するために必要であることが知られている.沖合に位置する観測点であっても,津波波形記録の後続波群は陸から反射する津波で構成される.そのため,非線形現象を正確に考慮することで沖合波形記録の再現性が高まることを確認できた.特に,岩手沖で観測された東北地震津波の場合,陸地の浸水を考慮することよりも方程式の非線形項を考慮することのほうが,沖合波形の後続波を忠実に再現することに重要な役割を果たしている.