18:15 〜 19:30
[SSS27-P02] 海溝沿いに伝搬する地震動の伝播解析-周波数領域FEM計算によるQ一定減衰の反映
我々(e.g. 古村ほか,2011)は、東北日本の東西断面に相当する構造で、海溝軸外側の浅い震源の地震の場合に、海水の存在によって大きい振幅でやや遅い後続波が陸の観測点で見られることを2次元差分計算で示した。今回は、海溝軸の伸長方向に地震波が伝播した場合の海水の影響を見た。差分計算では、Graves(1996)が狭帯域の波形計算という条件で示した方法、つまり、Q自体ではなく、f/Qが定数とした減衰を用いて計算している。そこで、Qが定数という、この方法より現実的な減衰を与えても同様に深い海を伝播した場合に大きい後続波が存在することを確認するため、周波数領域FEMによる2.5次元の構造で海水があった場合と無い場合との計算の比較を行った。2.5次元構造は、南西諸島海溝に垂直な断面の構造が1000km程長さ方向に続く場合、たとえば1911年喜界島沖地震から本州に向けて地震波が伝わるケースを念頭に、海溝沿いに長距離を地震波が伝播する例を設定した。その結果、海溝軸に直行する方向に深い海を通過して地震波が伝播する場合と同様、海溝軸に平行な方向に長距離を地震波が伝播した場合でも、海水があると、大きい振幅でやや遅く長く続く後続波が陸の観測点で見られることが判った。また、差分法のように、f/Qが定数と設定した場合には、Qを定数とした場合より、差分計算上のQ値参照周波数foより長周期側で振幅が小さくなることも、あたりまえであるが、確認できた。震源から数百キロ以上離れた場所のやや長周期地震の大きさを差分法を用いた手法で見積もる際には、foからの乖離具合によって数%以上の調整が必要であることに、注意を喚起したい。また、深い海を伝播してきた波を用いて昔の地震の規模を決める場合は、海水の影響による「やや長周期の大振幅後続波」の影響で規模が大きめになる傾向にも注意を喚起したい。