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[SSS28-07] 長周期地震動に関する予報に向けた距離減衰式の比較
キーワード:長周期地震動, 気象庁, 緊急地震速報, 距離減衰, 応答スペクトル
高層ビルにおける地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度は震度では適切に表現できないことがある。そのため、気象庁では高層ビル等における地震後の防災対応等の支援を図るため、長周期地震動による高層ビル内での被害の発生可能性等について知らせる「長周期地震動に関する観測情報(試行)」の提供を気象庁HPを通じて開始した(相澤・他, 2014)。現在、長周期地震動版の緊急地震速報である予測情報の発表について技術的検討を行っている。予測情報の発表については、2~3年後程度を目途に試行的運用を開始したいと考えている(詳細は気象庁HP審議会・検討会等のページ参照)。長周期地震動の予測に利用する手法は様々なものが考えられるが、その中でも任意の位置の震源で計算でき、かつ算出の早い距離減衰式を取り上げて議論を行う。 検討に用いた距離減衰式は、政府内での各種検討に用いられ、距離減衰式の係数や観測点増幅率の詳細なデータが入手でき、かつ、式のタイプやサイト補正手法の異なる以下の3つの論文で提唱されている式とする。・佐藤・他,2012及び佐藤・他,2010・Morikawa and Fujiwara,2013・横田・他,2010これらの距離減衰式について、緊急地震速報(警報)が発表され、かつ最終的に決定した気象庁マグニチュードが5.5以上である地震について、緊急地震速報の計算結果及び最終的に決定した震源要素で速度応答スペクトルの計算を行い、それぞれの結果について波形から計算した絶対速度応答スペクトルと比較し検討を行った。予測観測点は気象庁震度観測点、K-net観測点及びKiK-net観測点、予測事項は長周期地震動階級とする。 その結果、いずれの式も傾向を表現でき、特に気象庁一元化震源を用いた場合には、実際の階級と予測階級が±1以内に入る確率は概ね7~8割程度となった。しかし断層までの最短距離として、震源を中心とした推定Mに応じた半径の球面上からの距離を採用しているため、震源近傍では過大評価に、震源から遠い地域では過小評価になる傾向があること、長周期地震動が増幅しやすい地域で過小評価になる傾向があること等の問題点が認められる。また、緊急地震速報の1報毎に計算された震源を用いた場合、計算の精度により距離減衰計算精度も左右されるため、どのタイミングの震源を用いて予測情報を発表するかについては議論が必要である。引用文献:相澤・他, 2014, 本大会予稿集. 佐藤・他,2010, 日本建築学会構造系論文集 2010 年3 月号, 2010, p521-530. 佐藤・他,2010, 日本地震工学会論文集 第12巻, 第4 号(特集号), 2012, p354-373. Morikawa and Fujiwara, 2013, Journal of Disaster Research Vol.8 No.5, 2013, p878-888. 横田・他,2010, 日本地震工学会論文集 第11 巻, 第1 号, 2011, p81-101.