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[SSS28-08] 長周期地震動のための緊急地震速報の高度化
キーワード:緊急地震速報, 長周期地震動, 実時間地震動予測方法
はじめに 現在の気象庁による緊急地震速報は、マグニチュードMと震源距離の情報から対象サイトの地盤条件を考慮して地震動を予測する方法をとっている。地震規模が大きくなると震源域の広がりも無視できなくなる。この方法は、破壊が止まるまでは原理的に精度ある情報が決まらないため、長周期地震動による被害が問題になるような大規模地震に対しては、早期に精度ある情報を伝達するのは極めて困難である。従って、長周期地震動のための緊急地震速報の高度化には、M、破壊域の広がり、震源距離などを決めることなく、リアルタイムで観測された地震動情報から、大きな揺れがまだ届いてない地域の揺れを予測する方法がこの問題を一気に解決することができる。本研究は, Hoshiba(2013)により提案されている実時間地震動予測方法を長周期地震動の予測のための適用性を検討する。方法揺れがまだ到着していない地点Pの地震動は、すでに揺れの到着した地点rを含む表面SがPを取り巻く閉空間を構成していると考えると、Kirchhoff-Fresnel積分方程式で式(1)のように表わせる。この式の適用は、地震動の波長がuやGの空間的揺らぎよりも小さい、という条件が必要とされる。さらに、地震動の波長が、観測点および予測点の震源からの距離に比べて小さい場合、地震動は平面波で近似できるので、式(2)のような簡単な式で表わされる。震源点r0、観測点r、および予測点Pが一直線に並んでいると仮定できるとき、予測点Pと観測点rの相互相関は、式(3)で表わされる。(3)の式のTは2点間の伝達関数を表わすが、地震動が一次元的に伝播する平面波と考えられるときは、予測点Pと観測点r間のGreen関数とほぼ同じと考えてもいい(Wapenaar et al., 2010)。ここでは、より一般的な適用可能性を検討するため、伝達関数で定義している。(3)の式のSは、式(4)のように震源時間関数の自己相関関数として定義される。予測点Pが強震動観測点である時は、事前に小規模の地震の強震動記録を用いて、(3)の関係から2点間の伝達関数を求めておくことができる。その場合、観測点rで入射方位の検出し、伝達関数は入射方位に応じて事前評価しておく必要がある。観測記録がない場合でも、理論的なシミュレーションからTの推定は可能である。大規模地震が起こったときには、震源域に近い側の観測点rでの観測記録と伝播方位の情報に基づき、まだ観測されてない地点Pの長周期地震動の予測が可能となる。超高層ビルや大規模石油タンクなどの被害に関係する長周期地震動は、周期が2 ? 10秒、その波長は数kmから数十kmと比較的短いため、長周期地震動が問題となる多くの地震で(2)や(3)が適用可能と考えられる。(P ? r)が(r ?r0)に比べてあまり小さくない場合には、(1)に戻った計算が必要となる。