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[SSS29-08] 震源タイプのプロット法に関する再考察
キーワード:モーメントテンソル, 震源タイプ, 図法, ダブルカップル, CLVD, 等方変形
地震における力のシステムは、内部力源による点震源の仮定のもと、対称なモーメントテンソルで表現され、特徴的な向き・地震サイズ・震源タイプの情報をもつ。震源タイプとして、ダブルカップルを仮定することも多いが、主に誘発地震や火山性地震について、等方成分など非ダブルカップル成分の存在が指摘されている。また、ダブルカップルの組み合わせから非ダブルカップル成分が生じうることも分かっている。震源タイプに関する議論のため、震源タイプを分かりやすく可視化して表現することが重要である。震源タイプの情報は二自由度であるため、二次元平面上に表現可能である。Hudson et al.[1989]によるダイアグラム(HPRダイアグラム)がよく用いられるが、主な問題点として、スカラーモーメントを地震サイズとする概念[Aki and Richards, 2002]と整合的でないこと、が挙げられる。これは、モーメントテンソルの固有値を座標とする三次元空間上の点(λ1, λ2, λ3)を、立方体の面上に投影していることに起因する。そこで、Chapman and Leaney[2012]は球面投影とステレオ投影とを組み合わせた図法(CLダイアグラム)を考えた。球面投影によりHPRダイアグラムの問題点を解決し、ステレオ投影により球面上の点が面密度を保ったまま平面上にプロットされる。CLダイアグラムは、任意のメカニズムとダブルカップルとの合成で得られるメカニズムが中心を通る一直線上にプロットされる利点があるが、ダイアグラムが曲線に囲まれた煩雑な領域になること、等方成分が卓越した際に非等方成分の様子が分かりにくいこと、などの欠点もある。本研究では、HPRダイアグラムの問題点を解決しつつ、CLダイアグラムよりも直感的に理解しやすい矩形状ダイアグラム(AOIダイアグラム)を新たに開発した。点(λ1, λ2, λ3)を球面投影したのち、面密度を保ったまま円筒に投影して展開する。等方軸(等方成分だけを変化させた際の軌跡)と非等方軸(非等方成分をスカラーモーメント一定のもと変化させた際の軌跡)との直交座標系になっている。等方成分はP波の情報だけが現れる一方で、非等方成分はP波とS波からの情報が等価に現れるため、AOIダイアグラムは地震波形解析と調和的な図法だと言える。震源タイプのプロット法には、地図投影法と同様に万能な物は存在しないので、それぞれの図法の利点・欠点を理解して用いることが重要である。本研究では、実際の地震メカニズムの解析結果例をプロットしながら、ダイアグラムごとの見え方の違いや注意すべき点についても言及する。