日本地球惑星科学連合2014年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS29_28PO1] 地震発生の物理・震源過程

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*加瀬 祐子(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)

18:15 〜 19:30

[SSS29-P10] 南海・東南海・東海地震はスラブ内が潰れて付加体がはがれ、スラブが横ずれ回転すること~どうしてプレート間地震か~

*間瀬 博文1 (1.所属なし)

(図面を参照のこと)
中部地方はマントルが西方から押されて沈み込みプレートを登坂することで支えられている。この力学の中で中国・近畿北西部・北陸地方は東進する。一方南海トラフから沈み込んだ"南海スラブ"は北西に向いた斜面を形成し、(川岸から流れに差し込まれた洗濯板のように)東進するものの中に浸かっている。その縁は抵抗を受ける形である。それで"南海スラブ"は右回転力を受けて弱い部分が潰れ、その場所より深い部分(北側)は這い上がり、全体的な右回転も起こりうる。"南海スラブ"のプレート内地震(A)と、"東海スラブ"との境界が起こす横ずれ断層型地震(B)が南海~東海地震そのものである。地震(A)でプレートは次第に短くなり、付加体は発達し、結果トラフは南に張り出す。プレート間地震でなく南海トラフ地震はプレート内地震であり、"南海スラブ"が、陸側プレート(紀伊半島)と一体で地中から出てくる。そのことを2004年の地震が明らかにした。(この項(1)(2)より)
海底地形図(3)を見れば、右回転に関係すると思われる巨大な亀裂が2本存在する。
亀裂(a):大王崎の東約10km点から始まり南へ延びトラフに達する(北は伊勢湾内に続くように見える)。これを境に西側はトラフが南に張り出している。下盤"南海スラブ"に対し上盤(陸側プレート・付加体)が大きく動く場合に滑ると考えられる。
亀裂(b):浜名湖の沖でY字を描きトラフに達する。浜名湖より北は"南海スラブ""東海スラブ"が完全に分離し(7)、以南はトラフまで断裂しつつ接しているであろう。この断裂が海底まで達したもので、上盤を載せたまま下盤"南海スラブ"全体が動く場合に滑る亀裂。
地震(B)は亀裂(b)が滑り、亀裂(a)が滑るのは地震(A)と(B)の中間的なものと言える。
2004年山中氏が、東端は御前崎まで達する大きくメリハリの着いた1944年東南海地震の震源モデルを提案された。破壊が紀伊半島南東沖から始まり、だんだん陸側の深いほうに行き、その後トラフの方に飛び火して、それがだんだん北東方向にひろがって、最終的には北東方向(志摩半島沖から遠州沖)で大きな断層上のスベリを示した。震源付近が滑ったあとに時間をおいて北側が滑っているということから、紀伊半島沖の真ん中には破壊の進展を止める何かがあった、とのことである。(この項(4)(5)より)
その大きなスベリの領域は亀裂(a),(b)に重なる。1944年の地震は地震(A)だけでなく全てが起こったのかもしれない。山中氏の(プレート間地震の)震源過程を参考として地震(A),(B)亀裂(a),(b)による震源過程を構成してみた。
1.地震(A)が発生、スラブ等高線に沿って北東方向へ伝播した。2.付加体の剥離が南東方向に伝播しトラフに達した。3.その剥離がトラフに沿って、そして亀裂(a)に沿って伝播した。4.(上盤の回転)その剥離が大規模であった結果として亀裂(a)が滑った。5.(下盤の回転)環境が整い亀裂(b)が滑り地震(B)が発生した。トラフ付近にストレスが発生。6.三河地震が4,5の影響を受け発生。7.2004年の地震が発生し5のストレスを吸収した。
この震源過程で期待されるすべり量分布は、山中氏のそれと同様であるとしても矛盾点がない。南海~東海地震はプレート間でなくプレート内地震と横ずれ断層型地震であるとすれば、山中氏の成果は至極妥当なものであると強く感じる。
また、三河地震の際、京都での振幅は説明できないほど小さく岐阜でのそれは全く逆であった(4)。これは亀裂(a),(b)がもたらす地殻構造を原因として指摘できよう。さらに2004年の地震は南海地震の範疇である(2)としたが、その役割がさらに明確にできた。
参考文献
(1)間瀬博文(2009)/プレート内の自壊から始まる南海地震が関係する地域のシステム~沈降できないプレートと単独活動できない東海地震~/地震学会09年秋季大会/P3-64 (2)間瀬博文(2010)/2004年紀伊半島南東沖の地震は「南海地震」、這い上がっていた沈降プレート/地球惑星科学連合2010年合同大会/SSS027-P10 (3)海保海洋情報部/プレート境界域の精密海底地形図 http://www1.kaiho.mlit.go.jp/jishin/sokuryo/sokuryo.html (4)山中佳子(2004)/1944年東南海地震と1945年三河地震の震源過程/東大震研 (5)名大環境学研究科/2007年1月12日「徹底討論-次の東海地震はどこだ」報告書 (7)名大環境学研究科/沈み込むフィリピン海プレートの形状と構造/ http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/SEIS/slab/slab-j.html