日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30_28AM1] 海溝型巨大地震の新しい描像

2014年4月28日(月) 09:30 〜 10:45 メインホール (1F)

コンビーナ:*金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、古村 孝志(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、座長:古村 孝志(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター)

09:30 〜 09:45

[SSS30-01] 2004年スマトラ地震(Mw9.1)と2005年ニアス地震(Mw8.6)に先行した地震活動度の長期静穏化と活発化

*勝俣 啓1 (1.北海道大学理学研究院附属地震火山研究観測センター)

キーワード:2004年スマトラ地震, 2005年ニアス地震, 地震活動の静穏化, 地震活動の活発化, ZMAP, ISC

2004年スマトラ地震と2005年ニアス地震に先行して,地震活動度が長期的に静穏化し,同時に活発化していたことが分かった.ISCの震源カタログを用いて,1964年から2004年までに研究領域(80E-110E, 10S-20N)で発生した深さ100km以浅,実体波マグニチュード5.0 ≤ M ≤ 6.0の地震1153個を解析した.研究領域に東西0.5度×南北0.5度間隔で格子点を置き,ZMAPを使用して地震活動度の変化を詳細に調べた結果,1987年12月から静穏化が開始し,1989年7月から活発化が開始していたことが明らかとなった.静穏化領域と活発化領域は南緯2度から北緯6度の間に位置し,2004年スマトラ地震の震源域南部(破壊開始点付近),及びその南東側に接する2005年ニアス地震の震源域を覆っている.さらに,double-difference法によりISCの震源を再決定したPesicek et al.(2010)の結果及びGlobal CMTの震源メカニズム解を用いて,静穏化領域及び活発化領域の位置関係を調べると,海溝寄りではプレート境界面上の地震が活発化し,陸寄りでは地殻内地震と沈み込むプレート内地震が静穏化していることが分かった.この特徴的な空間パターンは,Kato et al. (1997)の数値シミュレーションから予想される海溝型プレート境界地震の本震発生数年から数10年前の状況とよく一致している.すなわち,本震の発生が近づくと,固着域の下端付近のプレート境界面上で前兆滑り(preseismic sliding)が開始し,その範囲が徐々に浅部に向かって広がって行く.それに伴い,プレート境界面上の小さなアスペリティが破壊されて低角逆断層型地震が活発化するが,上盤内(陸側の地殻内)では応力が一部解放されるので静穏化する.さらに,沈み込むプレート内ではdown dip extension型の地震は起きにくくなり,発生数が減少する.Kato, N., M. Ohtake, and T. Hirasawa (1997), Possible mechanism of precursory seismic quiescence: Regional stress relaxation due to preseismic sliding, Pure Appl. Geophys., 150, 249-267.Pesicek, J.D., C.H. Thurber, H. Zhang, H.R. DeShon, and E.R. Engdahl (2010), Teleseismic Double-difference Relocation of Earthquakes along the Sumatra-Andaman Subduction Zone using a Three-Dimensional Model, J. Geophys. Res., 115, B10303, doi: 10.1029/2010JB007443.