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[SSS30-07] JFASTコア試料の微量元素・同位体組成から見た日本海溝地震断層帯の地球化学的特徴
キーワード:地震, 断層岩, 微量元素, 同位体, IODP
統合国際深海掘削計画(IODP)第343次研究航海(JFAST: Japan Trench Fast Drilling Project)では,2011年東北地方太平洋沖地震で非常に大きな断層滑りが生じたと考えられる日本海溝付近において掘削調査が行われ,C0019E孔では主として650 mbsf~840 mbsfの間で,計53.3 mのコア試料が採取された。本研究では,820 mbsf付近のプレート境界断層試料を含む,これらのコア試料についての微量元素分・同位体分析の結果について報告する。 C0019E孔における岩相は,Unit 1~Unit 7の7つに区分される(Chester et al., 2013)。Unit 1~Unit 3は上盤プレートの堆積物であり,Unit 4がプレート境界断層,Unit 5~Unit 7は下盤プレートの堆積物である。これらの岩石についてICP-MSを用いた微量元素分析,TIMS,MC-ICP-MSを用いたストロンチウム・ネオジム・鉛同位体分析を行った。プレート境界断層(Unit 4)の試料は,肉眼的には黄褐色~暗褐色で非常に粘土鉱物に富む岩石であるが,微量元素組成から見るとかなり変化に富んでいる。しかしながら,それらはいずれも希土類元素(REE),HFS元素,トリウム等に富む顕著な特徴を示し,他のJFASTコア試料から識別される。下盤プレートの褐色泥質堆積物(Unit 5)は,上盤プレートの堆積物(Unit 1~Unit 3)とおおよそ類似した微量元素組成を示すが,両者はアルカリ金属やストロンチウム等の濃度がやや異なる。Unit 5の堆積物の下に存在する色彩変化に富む遠洋性堆積物(Unit 6)は,非常に変化に富む微量元素組成を示し,REEパターンには顕著なセリウム異常が見られる場合がある。ストロンチウム・ネオジム・鉛同位体組成の変化も各Unitの微量元素組成の特徴と整合的であり,岩相区分とよく対応する。 JFASTコア試料の岩相と微量元素・同位体組成および微化石年代の間にはよい対応関係があり,東北地方太平洋沖地震の浅部地震断層帯やフロンタルウェッジを構成する岩石の起源を理解するための手がかりを与えてくれる。プレート境界断層試料の微量元素・同位体組成は,近傍のインプットサイトであるDSDP Site 436下部に見られるスメクタイトに富む堆積物と類似しており,同様な堆積物を原岩とする可能性が高いと考えられる。プレート境界断層試料の分析値からみた地震時/非地震時の諸過程についても議論を行う。