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[SSS30-11] 2004年紀伊半島沖地震に先行したF-net連続波形画像の欠測増加
キーワード:F-net, 広帯域, 地震網, 長周期, 連続波形, 南海トラフ
1.はじめに広帯域地震観測網F-netは,地震計STS-1および2型,73観測点により構成される観測網である.地震計の固有周期は120秒(STS-2)より長く長周期の振動を捉えることが出来る.F-netのホームページでは連続波形画像が提供されており,画像の容量解析の結果として長周期の振動が報告されている(末,2010).2.解析連続波形画像の容量が変動を示すのは地表面の状態が変動している事による.そこでF-netの稼動状況を調べた.稼動状況を示す情報は2つある.a. 欠測データ情報: 瞬断から長期までの欠測を示す公式情報であり,欠測の理由も示される.一方,情報の更新は不定期である.b. 連続波形画像の欠測: 連続波形画像の統括頁に「画像無し」が示される.これは1日(Daily plot)あるいは1時間(Hourly plot)を越す不具合を示すと推測される.欠測の理由は示されないが,更新は毎日および毎時なされる.このうち「連続波形画像の欠測」に関しては,2011年東北地方太平洋沖地震前の欠測数の増加に関する報告がなされている(末,2013).そこで今回は南海トラフを対象として,2004年9月5日に発生の主題地震(M7.4)の状況を調べた.具体的には,2004年6月1日より同年9月10日までの凡そ3ヶ月間の糸魚川-静岡構造線と沖縄島の間(但し能登半島を除く)に位置する観測点の連続波形画像(Daily plot)の欠測数を調べた.3.結果図1に結果を示す.本震の凡そ1.5ヶ月以前にあたる2004年6月-7月前半の欠測最頻値は1でほぼ一定の状態であった.7月後半以降は欠測数の変動があった.本震6日及び5日前の8月30日および31日に大きな増加があり,それぞれ九州南部および東岸で集中した欠測があった.本震前日の9月4日には四国から九州にかけて南海トラフに沿った欠測があった(図2).本震後,欠測は漸次減少し消滅した.欠測の原因は,network troubleおよびelectric power supply troubleが主体であった.4.議論本震に先駆けてF-net連続波形画像の欠測が増える.この時,欠測は震源域に限られず震源域を囲む広い領域に現れる.これらは2011年東北地方太平洋沖地震にも見られた現象であり,大地震前に一般的に見られる現象かもしれない.発生が懸念される南海トラフの巨大地震の際には,本報告に示すようなF-net観測点の不調が先行することがあるかもしれない.全数欠測状態が,本震の凡そ1.5ヶ月前の7月23日-25日に発生した(図1). この現象は2011年東北地方太平洋沖地震前にも見られ,F-net網の不安定さの増大を示すものかもしれない.大地震前の欠測の増加は,発生した地表面の変動がF-netの許容値を超えた為と推測している.network troubleおよびelectric power supply troubleは,これを示す指標であるかも知れない.高感度地震観測網Hi-netではこのような現象は見られないが,これは周波数特性(固有周期=1秒)により長周期振動に反応しないためと推測する.地震・津波観測監視システムDONETにおいて異常が検出される場合には,F-net連続波形画像にも同時期あるいは先駆けて欠測が発生するかもしれない.欠測観測点の出現は影響を受ける範囲を示しており,その出現面積は発生地震の規模(マグニチュード)と相関するかもしれない.謝辞防災科学技術研究所のF-net観測網のデータを使用させて頂きました.記して感謝致します.文献末芳樹,2010,F-netの連続波形画像に観測される長周期振動(その1),日本地震学会講演予稿集,D31-12.末芳樹,2013,2011年東北地方太平洋沖地震に先行したF-net連続波形画像の欠測増加, JpGU2013, S-SS30-P01.