日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30_29PM2] 海溝型巨大地震の新しい描像

2014年4月29日(火) 16:15 〜 18:00 メインホール (1F)

コンビーナ:*金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、古村 孝志(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、座長:宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)

17:30 〜 17:45

[SSS30-36] 1703年元禄地震に伴う地盤変動:東京湾沿岸域の隆起・沈降

*中西 一郎1 (1.京都大学 理学部 地球物理学教室)

キーワード:元禄地震, 東京湾, 地盤変動

元禄地震(元禄16年11月23日;1703年12月31日)による東京湾沿岸での地盤変動を推定することを目的として,当時開発された新田及び塩田に関する史料の調査を行った.神奈川県,千葉県については関連史料を得ることができたが,東京都については発見していない.神奈川県に関しては,東京湾入口から東京湾西岸に開発された4新田又は塩田史料が得られた.史料の概要を南から北に向けて,以下に示す.○内川新田(1660年完成)(横須賀市).元禄地震から9年後に書かれた.「乍恐以返答書申上候事」(正徳二年六月)(1712年)(横須賀市蔵)の記述を示す.(前略)然所拾ヶ年以前未ノ年大地震より以来右之場所干かたニ罷成候(後略). この地域(浦賀水道西岸)が隆起したことを示している.○泥亀新田(1668年完成)(横浜市).元禄地震の1年後に書かれた.「可納申御年貢割付」(宝永元年十月)(1704年)(神奈川県立金沢文庫所蔵・永島家文書)の記述を示す.(前略)去未地震潮入取米なし(後略). この後に書かれた史料によると,この状態は長期間続いた.○吉田新田(1667年完成)(横浜市).元禄地震から8年後に書かれた.「乍恐書付を以御訴訟申上候」(宝永七年二月)(1710年)(吉田家文書)の記述を示す.(前略)八年以前未之年地震津浪二吉田新田潮留堤震崩(中略)地震以来亡所同前二罷成り候間(後略)○大師河原新田・塩田(1695年完成)(川崎市).地震後50年経って書かれた.「一札之事」(宝暦四年二月)(1754年)(川崎市立中原図書館蔵・池上家文書)の記述を示す.(前略)先年地震変地仕御運上御免之場所二御座候所(後略).千葉県に関しては,東京湾最奥に位置する行徳塩田に関する史料を示す.中世から続く歴史のある塩田であり,江戸幕府に引き継がれた.○行徳塩田(?~1624年)(市川市). 書かれた年月は不詳である.記載中の年号に寛延三年があり,元禄地震後約50年後に書かれたものと推定される.「行徳領塩浜由来書」(国文学研究資料館蔵)の記述を示す.(前略)元禄十六年未年十一月廿三日夜大地震平岡三郎右衛門様御支配之節二而 地形ゆり下ケ塩浜海面塩除堤保チ不申荒浜致出来候(後略). 地面が下がり,塩浜が海になったと書かれている.東京都,特に江東区には,元禄地震前に多くの新田が開発されたが,地震に関連する史料はまだ見つかっていない.また行徳塩田以東の新田・塩田についても調査を続けて行く必要がある.