18:15 〜 19:30
[SSS30-P05] 東北地方太平洋沖地震調査掘削(JFAST)における熱物性測定
キーワード:熱物性, JFAST, 熱伝導率, 熱拡散率, 比熱
東北日本太平洋沖Mw9.0巨大地震の発生をうけて、統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program、略称IODP)は、かつてにない迅速な検討を行い、掘削船「ちきゅう」による緊急掘削調査プロジェクト「東北地方太平洋沖地震調査掘削;Japan Trench Fast Drilling Project (JFAST)」の実施を決定した。この緊急掘削調査は、平成24年4月1日~5月24日と平成24年7月5日~7月19日の2回に分けて実施され、震源域における断層掘削を行った。掘削地点(北緯37度56分東経143度55分)は宮城県牡鹿半島東方沖約220km沖合の海域で、日本海溝までの距離は約6kmであった。水深が約6890mの海底から、深度約820mのプレート境界断層を貫通して、850mまで掘削して、チャート層に達した。東日本大震災の大津波をもたらした、滑り量が50mにも及ぶ震源断層を掘り抜き、温度測定と試料の採取に成功した。
JFASTのもっとも重要な科学目標の一つは、東北地震時の断層滑りに伴う摩擦熱の検出であり、その摩擦熱の残熱として現れる温度深度分布の異常を定量的特定して、地震時の動的せん断応力を決定することである。掘削孔内の温度プロファイルから、温度異常の決定ならびに温度異常値から、地震時の摩擦熱量、さらに動的せん断応力を算出するためには、地層の三熱物性(熱伝導率、熱拡散率と比熱)を知ることが必要不可欠である。本研究では、非定常面熱源法(通称ホットディスク法)により、4つのホールラウンドコア試料(それぞれの採取深度が177, 697, 802, 828 mbsf)の三熱物性値を測定した。また、非定常熱線法による船上測定では45個のハーフコアの熱伝導率が得られたとともに、定常法である分割棒法による粒状試料(38個)の熱伝導率測定が行われた。この3種類の熱伝導率測定法による結果は互いに整合し、C0019E孔では概ね0.9-1.5Wm-1k-1の範囲内に分布することが判明した。また、ホットディスク法による測定から、熱伝導率と熱拡散率の異方性を評価した結果、顕著な異方性がないことが確認された。
謝辞:本研究で用いたコア試料はIODPの提供によるものである。第343と343T次IODP研究航海の乗船研究者、ラボテクニシャン、掘削チーム、運航チームのご協力に感謝の意を表する。
JFASTのもっとも重要な科学目標の一つは、東北地震時の断層滑りに伴う摩擦熱の検出であり、その摩擦熱の残熱として現れる温度深度分布の異常を定量的特定して、地震時の動的せん断応力を決定することである。掘削孔内の温度プロファイルから、温度異常の決定ならびに温度異常値から、地震時の摩擦熱量、さらに動的せん断応力を算出するためには、地層の三熱物性(熱伝導率、熱拡散率と比熱)を知ることが必要不可欠である。本研究では、非定常面熱源法(通称ホットディスク法)により、4つのホールラウンドコア試料(それぞれの採取深度が177, 697, 802, 828 mbsf)の三熱物性値を測定した。また、非定常熱線法による船上測定では45個のハーフコアの熱伝導率が得られたとともに、定常法である分割棒法による粒状試料(38個)の熱伝導率測定が行われた。この3種類の熱伝導率測定法による結果は互いに整合し、C0019E孔では概ね0.9-1.5Wm-1k-1の範囲内に分布することが判明した。また、ホットディスク法による測定から、熱伝導率と熱拡散率の異方性を評価した結果、顕著な異方性がないことが確認された。
謝辞:本研究で用いたコア試料はIODPの提供によるものである。第343と343T次IODP研究航海の乗船研究者、ラボテクニシャン、掘削チーム、運航チームのご協力に感謝の意を表する。