18:15 〜 19:30
[SSS30-P08] 段丘地形・沖積平野地下地質の特徴に基づいた三陸海岸南部・陸前高田の長期地殻変動
キーワード:海成段丘, 三陸海岸南部, 長期地殻変動, 沖積平野
東北日本弧では地質学的に求めた地殻変動速度と測地学的に求めた地殻変動速度の不一致が指摘されている(池田,1996)。三陸海岸地域では,海成段丘の存在から,10万年スケールでは0.1 mm/yrオーダーでの隆起が示唆されている(小池・町田,2001)が,測地観測記録からは過去100年間最大で10mm/yrの速度で沈降している(西村,2012)。このような時間スケールによって相反する地殻変動傾向に対し、未知の巨大地震による隆起が推定された(池田,1996)ものの,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震では、プレート境界浅部の急激なすべりに伴う陸側プレートの変形によって、三陸海岸一帯で広域的な沈降が生じた(Ozawa et al., 2011)。海溝型巨大地震の繰り返しメカニズムに迫るためには長期地殻変動と2011年の地震のような超巨大地震時の地殻変動との関連性を理解することが重要であるが、そのためには,地形地質学的データに基づいて長期的な地殻変動を明らかにしていく必要がある。前述のように、三陸海岸では長期的な隆起が推定されているが,地震時の沈降が著しかった南部三陸海岸に着目すると、海成段丘の分布は限定的かつ、明確な編年データにも欠けており,長期的地殻変動自体が不明のままといえる。
このような背景のもと、発表者らは三陸海岸南部を中心に空中写真判読・露頭調査・ボーリング調査・既存ボーリングデータの収集・解析を行った。本発表では、予察的ではあるが、三陸海岸南部のうち、陸前高田における長期地殻変動を検討する。
空中写真判読を行った結果,本地域には標高20~70 mほどに定高性のある平坦面が認められたが、これらは著しく開析を受け丘陵状になっており、分布が断片的かつ連続性に乏しい。いくつかの露頭で層厚5 m以上の風化の進んだ礫層が認められたが,この礫層が段丘構成層なのか、あるいは開析を受けた段丘の基盤をなすのか判断はできなかった。ごく一部の露頭では風化の進んでいない海成礫と思われる層厚3 m以上の亜円礫層を観察できたが、上位を背後の古い段丘(あるいは丘陵)からの崩壊物と思われる風化礫に覆われ、編年可能なテフラなどの試料は見られなかった。地形判読の結果から、本地域では段丘地形から長期地殻変動を捉えることが難しいと言える。
沖積平野では、3本のボーリングコアの記載・粒度分析・電気伝導度(EC)測定、14C年代測定を行った。本地域の地下は、下位から花崗岩からなる基盤岩、網状河川堆積物、河口~潮間帯堆積物、内湾~デルタ堆積物、氾濫原堆積物から構成される。最も上流側のコアで8000~8500 cal BPの堆積年代を示す潮間帯堆積物と思われる極細粒砂とシルトのリズミカルな互層が現標高- 11.21~-16.26 mに認められた。この堆積物がハイドロアイソスタシーを考慮した本地域の当時の海面高度(Nakada et al., 1991)と同程度の標高に分布することから、本地域の地殻変動を完新世の平均的な傾向で見ると概ね安定傾向と考えられ、顕著な隆起傾向および、測地学的データから推定される1 mm/yrオーダーの沈降傾向にはないと考えられる。発表時にはコアデータを増やし、より詳細に議論を行う予定である。
このような背景のもと、発表者らは三陸海岸南部を中心に空中写真判読・露頭調査・ボーリング調査・既存ボーリングデータの収集・解析を行った。本発表では、予察的ではあるが、三陸海岸南部のうち、陸前高田における長期地殻変動を検討する。
空中写真判読を行った結果,本地域には標高20~70 mほどに定高性のある平坦面が認められたが、これらは著しく開析を受け丘陵状になっており、分布が断片的かつ連続性に乏しい。いくつかの露頭で層厚5 m以上の風化の進んだ礫層が認められたが,この礫層が段丘構成層なのか、あるいは開析を受けた段丘の基盤をなすのか判断はできなかった。ごく一部の露頭では風化の進んでいない海成礫と思われる層厚3 m以上の亜円礫層を観察できたが、上位を背後の古い段丘(あるいは丘陵)からの崩壊物と思われる風化礫に覆われ、編年可能なテフラなどの試料は見られなかった。地形判読の結果から、本地域では段丘地形から長期地殻変動を捉えることが難しいと言える。
沖積平野では、3本のボーリングコアの記載・粒度分析・電気伝導度(EC)測定、14C年代測定を行った。本地域の地下は、下位から花崗岩からなる基盤岩、網状河川堆積物、河口~潮間帯堆積物、内湾~デルタ堆積物、氾濫原堆積物から構成される。最も上流側のコアで8000~8500 cal BPの堆積年代を示す潮間帯堆積物と思われる極細粒砂とシルトのリズミカルな互層が現標高- 11.21~-16.26 mに認められた。この堆積物がハイドロアイソスタシーを考慮した本地域の当時の海面高度(Nakada et al., 1991)と同程度の標高に分布することから、本地域の地殻変動を完新世の平均的な傾向で見ると概ね安定傾向と考えられ、顕著な隆起傾向および、測地学的データから推定される1 mm/yrオーダーの沈降傾向にはないと考えられる。発表時にはコアデータを増やし、より詳細に議論を行う予定である。