日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30_29PO1] 海溝型巨大地震の新しい描像

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、古村 孝志(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)

18:15 〜 19:30

[SSS30-P10] 南海トラフ沿いで想定された最大クラスの巨大地震による西太平洋・東シナ海の津波伝播シミュレーション

*原田 智也1佐竹 健治2古村 孝志1 (1.東大総合防災情報研究セ/地震研究所、2.東大地震研究所)

キーワード:津波シミュレーション, 西太平洋, 東シナ海, 最大津波高, 最大クラスの南海巨大地震

本研究では,内閣府(2012)が南海トラフ沿いにおいて想定した最大クラスの巨大地震の11パターンの断層モデル(Mw9.1)による西太平洋・東シナ海の津波の伝播シミュレーションを行った.その結果,ニューギニア島沿岸,フィリピン諸島沿岸,上海付近沿岸において計算された最大津波高は,それぞれ,1.0〜5.0 m,1.0〜7.0 m,0.5〜2.0 mであった.これらの値は,南海トラフにおける既往最大地震である1707年宝永地震の種々の断層モデルによって計算されたものよりも2倍近く高くなる.各沿岸での最大津波高は,四国沖〜日向灘沖に大すべり域が存在するモデルで大きくなる傾向があった.しかし,駿河湾?紀伊半島沖に大すべり域を仮定したモデルも宝永地震モデルの1.5倍程度大きくなることが分かった.
 内閣府に設置された「南海トラフの巨大地震モデル検討会」は,南海トラフ沿いにおける最大クラスのプレート間巨大地震を想定し,日本沿岸における津内高を計算し,それによる人的及び経済的な被害想定を行った(内閣府,2012).その結果,津波高10m 以上の巨大津波が13 都県にわたって襲来することが想定された.内閣府の想定したM9クラスの南海地震による大津波は,西太平洋あるいは東シナ海の沿岸を襲うと考えられる.Harada and Satake (2012, AOGS; 2013, “Tsunami Events and Lessons Learned”, Springer)は,過去の南海トラフ沿いの巨大地震について提出されている複数の断層モデル(Ando, 1975, 1982; 相田, 1981a, 1981b; 安中・他, 2003)による西太平洋・東シナ海の津波の伝播シミュレーションを行っている.
 本研究では,想定された最大クラス巨大地震の11パターンの断層モデルによる同様の津波伝播シミュレーションを行った.津波の伝播計算は,コリオリ力を含む極座標系の非線形長波式(Satake, 1995)を用いた.津波の初期値は,内閣府(2012)による平面直交座標系(JGD2000)における値を極座標系における値に変換して使用した.海底地形はGEBCOの30秒グリッドデータを用いた.計算領域は東経115°—155°,南緯8°—北緯40°で,時間ステップは1秒,海底摩擦はマニングの粗度係数を0.025m-1/3sとして与えた.海岸では津波の全反射を仮定し,計算領域の境界では流出境界を用いた.以上の条件で,地震発生から24時間分の津波シミュレーションを行った.
 これらのシミュレーション結果は,当該海域における津波は,主に南海トラフの南西域(南海地震の震源域)のプレート間の破壊に依存し,沿岸での津波高はそのすべり量の大きさによることを示した.
 本研究では,内閣府により提供していただいた最大クラスの巨大地震による津波の初期値を使用した.記して感謝致します.本研究は,文部科学省委託研究「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」により行われた.