11:00 〜 11:15
[SSS30-P19_PG] 海底活断層を考慮したプレート境界地震モデル
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:プレート境界地震, アスペリティ地震モデル, 活断層地震モデル
一般に,地震はプレート内部で起きるプレート内地震と,プレート境界でおきるプレート間地震に分けられている.後者は,海溝の陸側での逆断層型の浅い地震で,2011年東北地方太平洋沖地震がこれにあたるとすることに対して異論を挟む研究者は皆無に近い.
筆者らは,南海トラフや日本海溝周辺に分布する長大な活断層の位置・形状を明らかにし,海底活断層の位置と歴史地震の震源域が良く対応することを示してきた.これに対し,アスペリティモデル(Lay and Kanamori,1980 )を重視する多くの研究者は,このような海底活断層の地震発生源としての重要性に理解を示しているとは言えない.海底地形データ(変動地形)と地下の断層の状況は異なると考える研究者は少なくない.しかしながら,海底の変動地形は海底活断層による累積的断層変位の具体的な物証であり,モデル設定において無視されてはならない情報である.
アスペリティモデルとは,プレート表面に定常的にすべる領域に囲まれて摩擦抵抗の大きな部分(アスペリティ)が複数存在するというものである(松澤,2009).日本海溝でも適用され,個々のアスペリティが破壊するとM7~8クラスの地震を起こすというものであり,複数のアスペリティが連動するとM9クラスの超巨大地震となるといわれている.
2011年東北地方太平洋沖地震では,このような複数のアスペリティが破壊し,50mを超える断層変位が海溝軸に達し,巨大津波が発生したとの説が広く受け入れられている.しかしながら,50mを超える断層変位の根拠となった地震前後の海底地形や地下構造の変化の原因は,断層運動によるものではなく地すべりの可能性が極めて強い.また,この地震の震源域に対応する海溝軸付近には,逆断層運動の累積性を示すような大規模な断層変位地形は存在しない.これに対して,三陸中部沖から茨城県沖にかけての海溝陸側斜面には,2011年地震の震源域と対応する範囲に逆断層変位を示す長大な変動崖が発達しており,この長大な海底活断層が超巨大地震の起震断層であると考えることができる.西暦869年に発生した貞観地震時にも同じような津波が発生しており,この長大な海底活断層は約1,000年ごとに,固有の活動としてマグニチュード9クラスの地震を繰り返し発生している可能性が高い.長大な逆断層の上盤側にはバルジ状の高まりが発達し,その上には多数の開口亀裂が認められる.地震後の潜水調査でもバルジ周辺で新たな亀裂の発生が認められ,この逆断層が活動したことを暗示している.
2つのモデルは,大地震はあらかじめ決まった場所で起こるとしている点では共通している.大きな相違点は,アスペリティモデルは一枚のプレート境界面から地震が発生すると考えているのに対して,活断層モデルは,定常的なすべりを伴う狭義のプレート境界(海洋プレートと島弧地殻の境界面)の上盤にトランプが重なるように規模の異なる複数の逆断層が発達し,それぞれの活断層が固有の地震を繰り返し発生させるという点である.
大きな地震を発生させるアスペリティが定常的なすべり領域に囲まれた強度の大きな部分とすることに対しても疑念がある.海底活断層は,陸域の活断層と同じように末端では変位がゼロとなる断層運動が累積しており,周囲より強度の弱いすべりやすい面(断層面)が繰り返し活動し地震を発生させていると考えた方が合理的である.したがって,狭義のプレート境界地震を除けば,プレート境界地震とされる巨大地震の多くは,地殻内の断層運動が原因となるプレート内地震にあたる可能性が高い.すなわち,日本海溝や南海トラフのプレート境界で発生する大地震の多くは,狭義のプレート境界での定常的なすべりでは解消されない歪が,上盤の島弧地殻内に蓄積され,海底活断層の運動によって解放されることによって発生すると考えるが,定常的なすべりと活断層変位の量的な関係については今後検討したい.
筆者らは,南海トラフや日本海溝周辺に分布する長大な活断層の位置・形状を明らかにし,海底活断層の位置と歴史地震の震源域が良く対応することを示してきた.これに対し,アスペリティモデル(Lay and Kanamori,1980 )を重視する多くの研究者は,このような海底活断層の地震発生源としての重要性に理解を示しているとは言えない.海底地形データ(変動地形)と地下の断層の状況は異なると考える研究者は少なくない.しかしながら,海底の変動地形は海底活断層による累積的断層変位の具体的な物証であり,モデル設定において無視されてはならない情報である.
アスペリティモデルとは,プレート表面に定常的にすべる領域に囲まれて摩擦抵抗の大きな部分(アスペリティ)が複数存在するというものである(松澤,2009).日本海溝でも適用され,個々のアスペリティが破壊するとM7~8クラスの地震を起こすというものであり,複数のアスペリティが連動するとM9クラスの超巨大地震となるといわれている.
2011年東北地方太平洋沖地震では,このような複数のアスペリティが破壊し,50mを超える断層変位が海溝軸に達し,巨大津波が発生したとの説が広く受け入れられている.しかしながら,50mを超える断層変位の根拠となった地震前後の海底地形や地下構造の変化の原因は,断層運動によるものではなく地すべりの可能性が極めて強い.また,この地震の震源域に対応する海溝軸付近には,逆断層運動の累積性を示すような大規模な断層変位地形は存在しない.これに対して,三陸中部沖から茨城県沖にかけての海溝陸側斜面には,2011年地震の震源域と対応する範囲に逆断層変位を示す長大な変動崖が発達しており,この長大な海底活断層が超巨大地震の起震断層であると考えることができる.西暦869年に発生した貞観地震時にも同じような津波が発生しており,この長大な海底活断層は約1,000年ごとに,固有の活動としてマグニチュード9クラスの地震を繰り返し発生している可能性が高い.長大な逆断層の上盤側にはバルジ状の高まりが発達し,その上には多数の開口亀裂が認められる.地震後の潜水調査でもバルジ周辺で新たな亀裂の発生が認められ,この逆断層が活動したことを暗示している.
2つのモデルは,大地震はあらかじめ決まった場所で起こるとしている点では共通している.大きな相違点は,アスペリティモデルは一枚のプレート境界面から地震が発生すると考えているのに対して,活断層モデルは,定常的なすべりを伴う狭義のプレート境界(海洋プレートと島弧地殻の境界面)の上盤にトランプが重なるように規模の異なる複数の逆断層が発達し,それぞれの活断層が固有の地震を繰り返し発生させるという点である.
大きな地震を発生させるアスペリティが定常的なすべり領域に囲まれた強度の大きな部分とすることに対しても疑念がある.海底活断層は,陸域の活断層と同じように末端では変位がゼロとなる断層運動が累積しており,周囲より強度の弱いすべりやすい面(断層面)が繰り返し活動し地震を発生させていると考えた方が合理的である.したがって,狭義のプレート境界地震を除けば,プレート境界地震とされる巨大地震の多くは,地殻内の断層運動が原因となるプレート内地震にあたる可能性が高い.すなわち,日本海溝や南海トラフのプレート境界で発生する大地震の多くは,狭義のプレート境界での定常的なすべりでは解消されない歪が,上盤の島弧地殻内に蓄積され,海底活断層の運動によって解放されることによって発生すると考えるが,定常的なすべりと活断層変位の量的な関係については今後検討したい.