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[SSS31-06] 山陰地方のGNSSデータに認められるひずみ集中帯
キーワード:地殻変動, ひずみ集中帯, GNSS, 山陰地方
はじめに山陰地方においては,1943年鳥取地震(M7.2)や2000年鳥取県西部地震(M7.3)などの地殻浅部を震源とする大地震が数多く発生している.また微小地震分布には海岸線にほぼ平行な帯状の地震活動域が見られることが知られている.一方,国土地理院のGEONETによって明らかになった日本列島の地殻変動分布では,山陰地方を含む中国地方は,ひずみ速度の小さい領域として認識されてきた(例えば,Sagiya et al., 2000).しかし,GNSSデータを用いた日本列島の定常的な地殻変動分布に関する研究は,GEONETの観測開始から間もない時期に行われた研究が多く,2002年の観測網増強後のデータについて十分検討されていない.そこで,本研究では,GEONETデータを用いて,山陰地方の地殻変動を概観し,特に地震活動域周辺の変動について報告する.解析方法解析には,国土地理院から公開されているGEONET日座標値(F3解)を用いた.観測点950462 (長崎県福江)を基準とする座標時系列に対し,経年変化成分,年周成分,半年周成分を持つ曲線を最小二乗法によりフィッティングし,経年変化成分を各観測点での変動速度とした.この速度ベクトルを,山陰地方の地震帯に直交する断面上に投影し,速度分布の特徴を調べた.また,速度ベクトルから,観測点を頂点とする三角形でのひずみ分布,平滑化したグリッド上でのひずみ分布(Shen et al., 1996)を計算し,微小地震分布との比較を行った.結果この地域で大きな地震が発生していない2005年4月から2009年12月までの平均速度分布からは,山陰地方の東部(島根県東部から鳥取県)において,海岸線に平行な微小地震活動域に対応する変形集中域を確認することができた.面積ひずみ速度分布では,収縮のひずみが太平洋側から日本海側に向かって漸減し,微小地震活動に対応するような変化は見られない.しかし,最大剪断ひずみ速度分布では,中国地方東部の内陸部が日本列島でも最小クラスの低ひずみ速度(10-8のオーダー)なのに対し,日本海沿岸では10-7程度の大きなひずみ速度が帯状に広がっていることが確認された.また,2000年鳥取県西部地震の震源域周辺では,周辺より大きなひずみ速度が観測されており,余効変動が継続していることを示唆するが,山陰地方の西部ではひずみ速度の大きな領域が空間的に連続するような分布は見られなかった.山陰地方東部の地震帯に直交する断面での速度分布は,地震帯に平行な(N80°E)方向の速度において,地震帯を挟んで速度が約2mm/年ほど急変しており,ひずみ集中帯であると認められる.ひずみ集中帯の幅は,北側が日本海になるため特定することが難しいが,地震帯の南側の山陽地方の変形は小さく,地震帯から北側10kmの範囲で主に変形しているように見える.地殻変動速度の方向より,この変動帯では右横ずれ運動をしていることが示唆され,この領域の地震のメカニズム解とも調和的である.また,東北地方太平洋沖地震以降の2012年1月から2013年12月までの速度分布には,東北地方太平洋沖地震の余効変動の影響が顕著に見られた.山陰地方のひずみ速度は倍増しており,地震帯を挟む速度の差もほぼ倍増している.観測されたひずみ集中帯の変動は,地震帯を挟む南北が別のブロックであるとした場合の右横ずれのブロック運動によって説明できると考えられるが,浅部の固着域の深さなどのパラメータを推定するためにはデータが不足しており,ひずみ集中域における稠密地殻変動分布を観測する必要がある.まとめGEONETデータの解析から,山陰地方の東部において,海岸線に平行な地震帯に沿ってひずみ集中帯が存在することが明らかになった.このひずみ集中帯では,幅10km程度で2mm/年の右横ずれ運動を示唆する変形が卓越しており,地震のメカニズム解とも調和的な運動方向を示す.東北地方太平洋沖地震以降は,変動速度が倍増した.ひずみ集中帯の変動メカニズムを明らかにするためには,さらに詳細な地殻変動分布を得ることが重要であり,観測とモデル計算の両面から解析をすすめる必要がある.参考文献Sagiya et al., PAGEOPH, 147, 2303-2322, 2000Shen et al., JGR, 101(B12), 27957-27980, 1996