日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS31_30PO1] 内陸地震への包括的アプローチ

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*重松 紀生(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・地震研究センター)、加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、西村 卓也(京都大学防災研究所)

18:15 〜 19:30

[SSS31-P04] 市販ICレコーダを用いた茨城県北部における臨時微小地震観測について

*齊藤 佳佑1 (1.齊藤 佳佑)

P波初動極性を用いて震源メカニズム解を推定する場合,その精度を高めるためには,高密度な地震観測網が必要であり,その実現のためには,できるだけ安価な地震観測システムを開発する必要がある.そこで,本研究では,初動極性の読み取りに特化した,機能を必要最低限に抑えた地震観測システムを提案する.用いた地震計は約1万円の上下動地震計で,市販されている約1万円のICレコーダをデータロガーとして用いた.ICレコーダの仕様書によると,ICレコーダの記録可能周波数は60 ~ 3400 [ Hz ] であるが,防災科学技術研究所Hi-netの観測点とICレコーダを用いた観測点で記録した地震波の周波数特性を比較した結果,20 ~ 30 [ Hz ] 程度の波も記録できることがわかった.
本研究では,正断層型の微小地震が多発している茨城県北部において2012年8月から約1か月間,臨時微小地震観測を行い,本研究で考案した地震観測システムの有効性を検討した.設置した臨時観測点数は全29点である.観測点設置の際は,実際の群発地震を想定し,全観測点を1本の道路沿いに設置することで,観測点設置に要する時間の短縮を図った.観測点設置から約1か月後に回収作業を行った後,P波初動極性の読み取りを行い,震源メカニズム解の推定を行った.震源メカニズム解の計算はHASHプログラム [ Hardebeck and Shearer (2002) ] を用いて行い,推定した震源メカニズム解の個数は87個である.
また,推定した震源メカニズム解の精度を検証するため,東京大学地震研究所の臨時観測点のデータを用いて推定した震源メカニズム解との比較を行った.比較に当たっては,防災科学技術研究所Hi-netの観測点も併せて,東京大学地震研究所の臨時観測点とHi-netの観測点のデータを用いて推定した震源メカニズム解 (以下,この観測点の組み合わせを①とする)と,ICレコーダを用いた臨時観測点とHi-netの観測点のデータを用いて推定した震源メカニズム解 (以下,この観測点の組み合わせを②とする) との比較を行った.また,①と②に対して,推定した87個の震源メカニズム解のP軸とT軸を比較した結果,震源球上のほぼ同じ位置に分布していたことから,両者の推定精度に対して有意な差はないと言える.したがって,ICレコーダの観測点のデータを用いて推定した震源メカニズム解は,従来通りの3成分地震計のデータを用いて推定した震源メカニズム解とほぼ同程度の精度を有していると言える.