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[SSS33-02] 水準測量より明らかにした東北地方太平洋沖地震による鳴子地域の上下地殻変動
キーワード:東北地方太平洋沖地震, 鳴子カルデラ, 水準測量, 沈降
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴い,太平洋沿岸で大きな沈降が起きた.沈降量は,内陸(西側)に行くに従って小さくなっていることが,GPSの広域観測で示されている(http://www.gsi.go.jp/common/000059956.pdf).我々は,この変動を捉えるべく,東北大学理学部地球惑星物質科学科の野外実習の一環として宮城県鳴子地域をほぼ東西に走る国道47号線に沿った二等水準路線の約10km区間(水準点番号047-064から047-074;以下,BM64,BM74などと表記)の水準測量を行った.測量は2011年8月23日から28日までと2013年8月19日から25日までの2回行い,いずれにも標尺はライカGPCL3,水準儀はライカDNA03を用いた.2009年の国土地理院の測量成果と比較することで,最も東側のBM64に対するほかの水準点の比高変化を求めた.いずれの水準点間も往復測量を行い,往復残差が一等水準測量を満たさないものは再測を行った.但し,実習期間の制約から,2011年のBM66-BM68間,2013年のBM72-BM74間は,片道測量しか行われていない.測量前の予想に反し,この区間では,西に行くほどBM64に対して沈降していることがわかった.地震の5か月後に行われた2011年8月の測量では,BM66からBM74はそれぞれ,13.0mm (BM66),21.4mm (BM68),81.7mm (BN70),91.1mm (BM72),113.9mm (BM74) 沈降し,10kmの基線にも関わらず大きな地震時変位とそれに引き続く余効変動が観測された.さらに2013年8月の測量の結果を2011年8月と比べると,8.5mm (BM66),16.2mm (BM68),23.7mm (BM70),41.9mm (BM72),46.2mm (BM74),それぞれ沈降していた.2011-2013年で得られた変位の空間パターンは2009-2011年で得られた結果とほぼ同一である.Ozawa and Fujita (2013),Takada and Fukushima (2013)はIn-SARおよびGPSデータの解析から,東北地方では主な火山地域で沈降が見られることを明らかにした.この沈降は,火山帯の地下にある軟らかな高温岩体が東西方向に引き伸ばされたことで起きたとされている.今回の調査区間はこの地域に含まれ,我々の測量結果はこれと調和的である.一方でこれらの先行研究は地震に伴う変動のみに着目しているが,我々の結果は地震後も鳴子周辺域では継続して沈降が継続していることを示唆する結果となった.特に,鳴子カルデラの縁にかかると見られるMB68とBM70の間で,沈降量が急増するのは注目に値する.謝辞2011年の水準測量に参加された小林諒平さんと原永美さんに感謝いたします.