日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS33_30AM1] 地殻変動

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 315 (3F)

コンビーナ:*村瀬 雅之(日本大学文理学部地球システム科学科)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、座長:村瀬 雅之(日本大学文理学部地球システム科学科)

09:45 〜 10:00

[SSS33-04] 2013年樽前山近傍の地震活動に先行した地殻変動の圧力源モデル(詳報)

小四郎丸 拓馬1、*村上 亮1 (1.北海道大学大学院地震火山研究観測センター)

キーワード:地殻変動, 活火山, 群発地震活動, 樽前山

樽前山は北海道の南西部に位置する標高1,041mの活火山である.歴史時代には,1667年と1739年に大規模なプリニー式噴火が発生した.また,1909年噴火では,山頂に溶岩ドームを形成する噴火を起こしており,本格的なマグマ噴火を頻繁に繰り返している.しかし,近年の火山活動は,噴気や浅部の火山性地震活動に限られていて,概ね低調である.気象庁などのGPS繰り返し観測では,溶岩ドーム付近で変動が見いだされているが,力源は比較的浅部に推定されている.一方,国土地理院や気象庁が実施しているやや広域のGPS連続観測では,深部の火山活動によると考えられる地殻変動は認められていない. これまで,樽前山深部の流体活動を示唆する地殻変動は捉えられてこなかった.2013年7月上旬頃から,従来は顕著な地震活動が無かった山頂ドームの西方2kmの深さ約3-5kmの領域において,活発な地震活動が始まったが,それに先立ち地殻変動が進行していたことが,傾斜及び歪変化が樽前山周辺の複数の連続地殻変動観測点の記録から確認された.変化の大きさは,およそ1μrad/μstrainレベルであった.複数の観測点に同期して現れており,その出現期間は,降雨及び遠地地震の影響の可能性が低いことから,地下の力源の何らかの活動に起因する可能性が高い.地殻変動は7月中旬までに集中して発生しており,それ以降は,2014年2月時点に至るまで,認められていない.地殻変動は球状圧力源及びシルを仮定して,グリッドサーチを試みた.山頂ドームの北北西方向の深さ4.2㎞(海抜)に体積変化量3.4×105m3の膨張性球状圧力源が最も良く観測値を説明する.力源の位置は,2013年7月頃より増加した地震活動の震源域のやや東方である.力源の位置や活動時期が地震活動のそれらと近接しているため地殻変動と地震活動の間には何らかの関連性があると考えられる.講演では,示唆される両者の関係についても議論する.