日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS33_30PO1] 地殻変動

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*村瀬 雅之(日本大学文理学部地球システム科学科)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

18:15 〜 19:30

[SSS33-P04] 水準測量と潮位から推定した房総半島の地殻上下変動(1966~2001年)

*小林 昭夫1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:房総半島, 地殻変動, 水準測量, 潮位

関東地方は陸側プレートの下にフィリピン海プレートと太平洋プレートが沈み込む複雑な構造をしている。陸側プレートとフィリピン海プレートとのプレート境界では、1923年関東地震が発生しており、プレート境界面での最近の固着分布も推定されている[鷺谷(1998)、Nishimura et al. (2007)]。関東地方では、南海トラフ沿いのような深部低周波微動は観測されていないが、房総半島沖では数年に一度、地震を伴う継続期間10日程度のスロースリップが発生している。また、Fujii (1993)は房総半島の水準測量データを調査し、1965~1972年の間にスロースリップが発生した可能性を指摘している。スロースリップの発生域は、将来の巨大地震発生に向けて歪が蓄積されているプレート境界の固着域に隣接しており、その過去からの発生状況を把握することは、プレート境界の状態把握や巨大地震の発生予測のための重要な情報となる。ここでは、GNSS展開以前の房総半島について、非定常上下地殻変動の有無を確認した。
過去の地殻変動を調査する手段として、水準測量は観測精度が高いが実施頻度が低い。潮位記録は海況の影響除去が難しいために水準測量より地殻変動の観測精度は悪いが、連続記録でありイベントの時期の特定には有力な情報を提供する。これらを組み合わせることにより、過去に発生した非定常なイベントによる地殻変動の場所と時期を推定できる可能性がある。これまで、南海トラフ沿いの水準測量と潮位観測から、長期的スロースリップの場所と時期を推定してきた。
GNSSの上下変動データから定常的な地殻上下変動速度を推定し、それを水準測量結果による各測量間の上下変動から差し引くことにより、各期間に発生した非定常的な地殻変動を抽出する。GNSSデータは国土地理院GEONETの日座標値F3解を使用した。GEONET観測点のアンテナ交換などに伴う人為的要因によるオフセットは、国土地理院Webページで公開されているデータセットを用いて補正した。ここでは1997年1月から2011年1月までの14年間のデータから定常的な地殻上下変動速度を推定した。この期間には房総半島の地殻上下変動に影響を与えるイベントは発生していない。なお2000年の伊豆諸島北部イベントや房総半島沖のスロースリップによる陸上の上下変化は1cm未満である。
房総半島の水準測量の間隔が1~数年になった1966年以降2001年までについて調査した。水準測量データは地殻活動観測データ総合解析システム(INCA)[鷺谷・他(2003)]から入手した。GNSSから推定された定常的な地殻上下変動速度に測量期間の長さを乗じた変化量を、水準測量間の地殻上下変動から差し引く。期間中に非定常な地殻変動が発生していなければ、上下変動の分布はゼロを中心とするばらつきの範囲内に入るはずである。
1966~2001年の水準測量からは、市原市北部の工業用水の揚水による地盤沈下、茂原地区を中心とする天然ガスかん水の採取による地盤変動の他は、目立った非定常変動は見られない。津村(1963)の方法で補正した潮位では、館山市布良で1980年代に沈降の停滞(数cmの非定常分)が見られるが、水準測量では対応する変化は見られない。また、Fujii (1993)により指摘された1965~1972年の房総半島中部の隆起もばらつきの範囲内であり、今後調査対象の水準路線を追加して確認する予定である。

本調査には国土地理院GEONETの座標値およびオフセット値、水準測量結果を使用させていただきました。