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[SSS33-P10] キネマティックPPP時系列解析によって得られた2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動にともなう特徴的ひずみ分布
キーワード:ひずみ分布, 東北地方太平洋沖地震, 余効変動, キネマティックPPP
2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)に伴って東北地方を含む広い範囲で大規模な地震時変位が観測された.この地震に伴うプレート境界面でのすべりは広い範囲で数十m以上であり,(例えば[1]),これは,それまで上盤側プレートにかかっていた応力が急激に除荷されたことに相当する.Ohzono et al. [2] はGEONET観測データの日座標値解析から推定される地震時ひずみ分布と,断層モデルから推定される地震時ひずみ分布を比較することによって,東北地方におけるひずみ不均質を見出し,それと地下不均質構造との関連性について議論を行っている.またOzawa and Fujita [3] は,GPS観測とIn-SAR解析から東北地方の火山周辺域における局所的な地震時変位を検出し,シミュレーション結果との比較から,それらは地下に弾性定数が小さい物質を仮定すれば説明可能であることを示した.一方で,これらの先行研究ではGPS日座標値を使用している.そのため本震直後に発生したと考えられる余効変動や余震の影響を含み,純粋な地震時変位にもとづいた議論ではない.本研究ではキネマティック単独精密測位 (kinematic Precise Point Positioning; kPPP) 法を用いて1秒毎のGPS座標値を推定することで,できるかぎり純粋な地震を抽出し,より短い時定数の地震後余効変動について議論を行う.
使用した観測点はGEONET 観測点1208点である.kPPPデータ解析にはGIPY-OASIS IIを用いた.解析した結果のうち,2011年3月11日の本震後1時間分,日座標データは2010年1月1日から2012年10月末までのデータのうち2011年3月10日から15日までのデータを使用した.また純粋な地震時変位は表面波の伝搬時間,大きい余震の発生時刻,震源時間関数等を考慮し,本震後600秒の前後100秒の変位の平均値と地震前の座標値の差から求めた.そして2011年3月12日での日座標値から10日の日座標値を差し引いて得られる変位から,純粋な地震時変位を除去することで純粋な地震時変位以外の変位を抽出した.さらに得られた変位場の特徴を見るために,それらの変位を入力としてShen et al. [4]の手法にもとづき面積ひずみ分布を求めた.その結果,大局的には東日本の広範囲で地震直後から進行する余効変動による膨張ひずみが明瞭であるが,山形県の月山周辺域で周囲よりも大きな膨張となり,一方,宮城・山形県境に位置する蔵王周辺域では,その大きさが本震前のkPPPデータから推定したノイズレベル以下ではあるが,収縮となるような特徴的ひずみ分布が得られた.次に,12日の日座標値の代わりに15日のものを使用して同様にひずみ分布を求めた.その結果,月山周辺の膨張ひずみ域は拡大し,蔵王周辺の収縮ひずみは膨張ひずみへとその極性が反転することが明らかとなった.これらの結果は先行研究であるOzawa and Fujita [2]による結果と解析期間を揃えた場合は調和的であるものの,地震直後ではその膨張-収縮の極性が逆転しているという興味深い結果が得られた.本発表では,こうした特徴的なひずみ分布の時空間発展がどのように生じているかを,地震波速度構造との比較を含め,より詳細な議論を行う.
[1] Iinuma et al., (JGR, 2012), [2] Ohzono et al., (EPS, 2012), [3] Ozawa and Fujita, (JGR, 2013), [4] Shen et al., (JGR, 1996)
使用した観測点はGEONET 観測点1208点である.kPPPデータ解析にはGIPY-OASIS IIを用いた.解析した結果のうち,2011年3月11日の本震後1時間分,日座標データは2010年1月1日から2012年10月末までのデータのうち2011年3月10日から15日までのデータを使用した.また純粋な地震時変位は表面波の伝搬時間,大きい余震の発生時刻,震源時間関数等を考慮し,本震後600秒の前後100秒の変位の平均値と地震前の座標値の差から求めた.そして2011年3月12日での日座標値から10日の日座標値を差し引いて得られる変位から,純粋な地震時変位を除去することで純粋な地震時変位以外の変位を抽出した.さらに得られた変位場の特徴を見るために,それらの変位を入力としてShen et al. [4]の手法にもとづき面積ひずみ分布を求めた.その結果,大局的には東日本の広範囲で地震直後から進行する余効変動による膨張ひずみが明瞭であるが,山形県の月山周辺域で周囲よりも大きな膨張となり,一方,宮城・山形県境に位置する蔵王周辺域では,その大きさが本震前のkPPPデータから推定したノイズレベル以下ではあるが,収縮となるような特徴的ひずみ分布が得られた.次に,12日の日座標値の代わりに15日のものを使用して同様にひずみ分布を求めた.その結果,月山周辺の膨張ひずみ域は拡大し,蔵王周辺の収縮ひずみは膨張ひずみへとその極性が反転することが明らかとなった.これらの結果は先行研究であるOzawa and Fujita [2]による結果と解析期間を揃えた場合は調和的であるものの,地震直後ではその膨張-収縮の極性が逆転しているという興味深い結果が得られた.本発表では,こうした特徴的なひずみ分布の時空間発展がどのように生じているかを,地震波速度構造との比較を含め,より詳細な議論を行う.
[1] Iinuma et al., (JGR, 2012), [2] Ohzono et al., (EPS, 2012), [3] Ozawa and Fujita, (JGR, 2013), [4] Shen et al., (JGR, 1996)