18:15 〜 19:30
[SSS33-P11] フィリピン・ミンダナオ島におけるフィリピン海プレートの収束の解明
キーワード:フィリピン海溝, フィリピン断層, GPS観測, ミンダナオ島
フィリピンではフィリピン海プレート(PHP),スンダランドプレート(SUP)がそれぞれ東方向,西方向から沈み込んでいる.また,長大な左横ずれ断層であるフィリピン断層がフィリピン全土を南北に縦断している.人口密集域であるフィリピンにおいて,地震災害リスクを予測することは非常に重要であるが,日本のような精密観測網による監視体制が整備されておらず,未解明の問題が多数残されている.2009年よりJICA-JST地球規模課題対応国際科学技術協力事業「フィリピン地震火山監視能力強化と防災情報の利活用推進プロジェクト」が開始され,その一環として,2010年よりミンダナオ島においてGPSキャンペーン観測が行われている.本研究ではこの観測データより地殻水平速度場を求め,ミンダナオ島の地殻ブロックについて議論する.
2010~2013年までの毎年3月に,ミンダナオ島東部の15箇所において,毎回3~6日間にわたって連続観測データを取得した.解析にはBernese GPS Software 5.0を用い,IGS連続観測点PIMO(ケソン市)を基線解析に含めることで,ITRFに準拠した全点の座標と速度を算出した.なお,この期間には治安上の問題によりミンダナオ島西部で観測が行われていない.そこで,1997~2003年に西部を含めて実施された観測から得られた地殻水平速度場を併用する.また,議論の際は全体の速度場をSUPに準拠させた.得られた地殻水平速度場を概観すると,PHPの沈み込みに伴い全体として西北西向きの水平変位が卓越する一方で,海溝からの距離増加に伴う減衰は顕著でない.加えて,フィリピン海溝とフィリピン断層を境界とする前弧帯では北方向の水平速度が重畳し,ミンダナオ島の本体部とは異なる地殻ブロックを形成していると推定される.
USGSが公表するスラブモデルデータを元に,PHP境界面の形状を深さ80kmまで196枚の三角形要素で近似した.この境界面にDeMets et al.(2010)によるプレート相対運動モデルMORVELに基づく PHP-SUPの相対運動速度を与え,ミンダナオ島の弾性圧縮変形を計算した.深さ80kmまで固着率100%としているにも関わらず,計算値は観測値を最大15%程度しか説明できない.そこで,さらに地殻ブロックの剛体回転運動を考慮する必要がある.島全域の速度場から剛体回転運動のオイラー極の位置および角速度を推定した場合,ブロック運動の予測値と観測値の残差のが観測値の持つ誤差を有意に上回ったため,ミンダナオ島全域が単一の地殻ブロックであるという仮説は棄却される.フィリピン断層を境界として速度場が系統的に変化することを考慮しても,ミンダナオ島は複数のセグメントから構成されていると考えられる.
さらに,地殻水平速度データの逆解析を行い,PHP境界面の固着分布の推定を試みた.しかし,解析結果の解像度を事前評価するためCheckerboard Resolution Testを行ったところ,十分な解像度が得られないことが判明した.これは,観測点の数と観測網の空間的広がりの両方が十分でないことによる.ミンダナオ島内の地殻変動は,本研究で議論したPHPの沈み込みによる弾性圧縮変形および地殻ブロックの剛体回転運動以外にも,SUPの西側からの沈み込みによる影響,およびフィリピン断層の運動による影響なども内包している.これらの大部分が未解明であり,より稠密かつ広域のGPS観測網が必要である.
2010~2013年までの毎年3月に,ミンダナオ島東部の15箇所において,毎回3~6日間にわたって連続観測データを取得した.解析にはBernese GPS Software 5.0を用い,IGS連続観測点PIMO(ケソン市)を基線解析に含めることで,ITRFに準拠した全点の座標と速度を算出した.なお,この期間には治安上の問題によりミンダナオ島西部で観測が行われていない.そこで,1997~2003年に西部を含めて実施された観測から得られた地殻水平速度場を併用する.また,議論の際は全体の速度場をSUPに準拠させた.得られた地殻水平速度場を概観すると,PHPの沈み込みに伴い全体として西北西向きの水平変位が卓越する一方で,海溝からの距離増加に伴う減衰は顕著でない.加えて,フィリピン海溝とフィリピン断層を境界とする前弧帯では北方向の水平速度が重畳し,ミンダナオ島の本体部とは異なる地殻ブロックを形成していると推定される.
USGSが公表するスラブモデルデータを元に,PHP境界面の形状を深さ80kmまで196枚の三角形要素で近似した.この境界面にDeMets et al.(2010)によるプレート相対運動モデルMORVELに基づく PHP-SUPの相対運動速度を与え,ミンダナオ島の弾性圧縮変形を計算した.深さ80kmまで固着率100%としているにも関わらず,計算値は観測値を最大15%程度しか説明できない.そこで,さらに地殻ブロックの剛体回転運動を考慮する必要がある.島全域の速度場から剛体回転運動のオイラー極の位置および角速度を推定した場合,ブロック運動の予測値と観測値の残差のが観測値の持つ誤差を有意に上回ったため,ミンダナオ島全域が単一の地殻ブロックであるという仮説は棄却される.フィリピン断層を境界として速度場が系統的に変化することを考慮しても,ミンダナオ島は複数のセグメントから構成されていると考えられる.
さらに,地殻水平速度データの逆解析を行い,PHP境界面の固着分布の推定を試みた.しかし,解析結果の解像度を事前評価するためCheckerboard Resolution Testを行ったところ,十分な解像度が得られないことが判明した.これは,観測点の数と観測網の空間的広がりの両方が十分でないことによる.ミンダナオ島内の地殻変動は,本研究で議論したPHPの沈み込みによる弾性圧縮変形および地殻ブロックの剛体回転運動以外にも,SUPの西側からの沈み込みによる影響,およびフィリピン断層の運動による影響なども内包している.これらの大部分が未解明であり,より稠密かつ広域のGPS観測網が必要である.