10:30 〜 10:45
[SSS34-P16_PG] 糸魚川-静岡構造線活断層系下円井断層及び鳳凰山断層のESR年代測定
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:電子スピン共鳴, ESR年代測定, 糸魚川-静岡構造線, 活断層系, シュードタキライト, 粘土鉱物
糸魚川―静岡構造線(糸静線)活断層系南部に位置する下円井断層は,約2万年前に形成された低位段丘堆積物を変位させており,戸沢露頭のトレンチ調査によると,最新活動年代は1,550±70 yBP~2,350±60 yBPであると推定されている(遠田他,2000)。また,下円井断層の断層面沿いには黒色脈状岩がネットワーク状に分布しており,この黒色脈状岩は下盤の低位段丘堆積物や断層ガウジ中に注入していることから,下円井断層の最新活動時に地表下30~40m以浅で生成された粉砕起源シュードタキライトであると推定されている(狩野他,2004)。一方,鳳凰山断層は下円井断層の西方に約6km 離れて分布しており,ドンドコ沢露頭の断層破砕帯などでは断層ガウジがほとんど認められないことから,鳳凰山断層は新第三紀~第四紀初期に形成されて以降は活動しておらず,第四紀前期~中期頃には糸静線の活動は下円井断層に移動したと推定されている(Koyama,1990)。鳳凰山断層や下円井断層の北西方延長部に位置する牛伏寺断層はM8級の大地震を発生させる可能性があり,2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)以降,その活動性がさらに高まっている。牛伏寺断層を含む糸静線活断層系中部が活動した場合,その南東延長部はどこまで連動するか現時点では全く不明であり,下円井断層のみならず鳳凰山断層の詳しい活動性評価を行うことは非常に重要である。そこで今回,下円井断層及び鳳凰山断層から採取した断層岩のXRD(X線回折)分析及びESR年代測定を実施した。
XRD分析の結果,戸沢露頭の下円井断層の断層ガウジからはスメクタイトが検出され,断層面直上の黒色脈状岩からはスメクタイトと緑泥石/スメクタイト混合層が検出された。これに対し,石空川露頭の鳳凰山断層の黒色及び灰色断層ガウジからは,イライトの他,緑泥石(黒色ガウジ)と緑泥石/スメクタイト混合層(灰色ガウジ)がそれぞれ検出された。一般に,粘土鉱物の生成深度は,スメクタイト,緑泥石/スメクタイト混合層,緑泥石,イライトの順に深くなると考えられるので,鳳凰山断層はより深部に位置していた時に活発に活動していたことが示唆される。一方,ESR年代測定の結果,下円井断層の断層ガウジ及び黒色脈状岩の石英粒子から強いAl中心及びTi中心の信号が検出されたが,飽和傾向を示すことから断層摩擦熱によるリセットは働かなかったと考えられる。Al中心やTi中心は約300-350℃程度でリセットされる(福地,2004)ので,最新活動時において摩擦熱温度はそれ程上昇しなかったと推定される。これに対し,鳳凰山断層の灰色ガウジからはモンモリロナイト固有の四重信号が検出され,2.8~3.2±0.4MaというESR年代値が得られた。灰色ガウジから検出される緑泥石/スメクタイト混合層の生成温度は130-200℃程度であると考えられる(吉村,2001)ので,隆起速度を本調査地域における100年間の平均値である2mm/y,地温勾配を30℃/kmと仮定すると,生成年代は2.2Ma~3.3Maとなり,ESR年代値と一致することが判明した。
引用文献
福地龍郎(2004)ESR法による断層活動年代測定, 深田研ライブラリー63,45p.
狩野謙一・他(2004)地質学雑誌, 110, 779-790.
A. Koyama(1990)J. Geosci. Osaka City Univ. 33, 1-47.
遠田晋次・他(2000)地震, 52, 445-468.
吉村尚久編(2001)粘土鉱物と変質作用, 地学双書32, 293p.
XRD分析の結果,戸沢露頭の下円井断層の断層ガウジからはスメクタイトが検出され,断層面直上の黒色脈状岩からはスメクタイトと緑泥石/スメクタイト混合層が検出された。これに対し,石空川露頭の鳳凰山断層の黒色及び灰色断層ガウジからは,イライトの他,緑泥石(黒色ガウジ)と緑泥石/スメクタイト混合層(灰色ガウジ)がそれぞれ検出された。一般に,粘土鉱物の生成深度は,スメクタイト,緑泥石/スメクタイト混合層,緑泥石,イライトの順に深くなると考えられるので,鳳凰山断層はより深部に位置していた時に活発に活動していたことが示唆される。一方,ESR年代測定の結果,下円井断層の断層ガウジ及び黒色脈状岩の石英粒子から強いAl中心及びTi中心の信号が検出されたが,飽和傾向を示すことから断層摩擦熱によるリセットは働かなかったと考えられる。Al中心やTi中心は約300-350℃程度でリセットされる(福地,2004)ので,最新活動時において摩擦熱温度はそれ程上昇しなかったと推定される。これに対し,鳳凰山断層の灰色ガウジからはモンモリロナイト固有の四重信号が検出され,2.8~3.2±0.4MaというESR年代値が得られた。灰色ガウジから検出される緑泥石/スメクタイト混合層の生成温度は130-200℃程度であると考えられる(吉村,2001)ので,隆起速度を本調査地域における100年間の平均値である2mm/y,地温勾配を30℃/kmと仮定すると,生成年代は2.2Ma~3.3Maとなり,ESR年代値と一致することが判明した。
引用文献
福地龍郎(2004)ESR法による断層活動年代測定, 深田研ライブラリー63,45p.
狩野謙一・他(2004)地質学雑誌, 110, 779-790.
A. Koyama(1990)J. Geosci. Osaka City Univ. 33, 1-47.
遠田晋次・他(2000)地震, 52, 445-468.
吉村尚久編(2001)粘土鉱物と変質作用, 地学双書32, 293p.