日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS34_29AM1] 活断層と古地震

2014年4月29日(火) 09:00 〜 10:48 502 (5F)

コンビーナ:*吾妻 崇(独立行政法人産業技術総合研究所)、杉戸 信彦(法政大学人間環境学部)、藤内 智士(高知大学理学部応用理学科)、吉岡 敏和(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・地震研究センター)、座長:小松原 琢(独立行政法人産業技術総合研究所)、杉戸 信彦(法政大学人間環境学部)

10:30 〜 10:45

[SSS34-P18_PG] 石川県熱野遺跡の噴砂痕と森本・富樫断層帯

ポスター講演3分口頭発表枠

*平松 良浩1小阪 大2 (1.金沢大学、2.白山手取川ジオパーク推進協議会)

キーワード:強震動, 森本・富樫断層帯, 液状化, ジオパーク

はじめに

 遺跡発掘現場で発見される噴砂の痕跡は歴史時代の地震活動の解明に重要である。白山を源流として日本海に注ぐ手取川の扇状地の扇央部に位置する部入道遺跡では弥生時代後期(約1800-1900年前)から古代?中世(約700-900年前)にかけて発生した噴砂痕が確認されており、森本・富樫断層帯の活動との関連性が議論されている(平松・小阪, 2013)。本講演では部入道遺跡に近接する熱野遺跡で2013年度の発掘調査により発見された噴砂痕について報告する。

噴砂痕の形態と形成時期

 熱野遺跡では、弥生時代後期月影式土器(約1800-1900年前)を含む竪穴住居跡が確認された面において、液状化現象による噴砂痕であるひび割れ状に延びる灰色の砂の跡が検出された。検出された噴砂痕は、液状化した砂礫層が上位のシルト層中を上昇する過程で形成された割れ目(以下、砂脈)である(写真1)。砂脈は調査地で主なものが4箇所確認された。そのうち、噴砂1では最大幅20cmで約2mの長さで北西方向に延びている.砂脈内は1mm以下の灰白色の細砂である.この噴砂は砂脈が検出された面より約50㎝下層の礫層とシルト層の間にある砂層から延びており、噴砂検出面の上位にある弥生時代後期から平安時代前期にかけて堆積した黒色土層に貫入していない。この噴砂は当時の地表に噴出した後に黒色土層に覆われたと考えられるため、この噴砂痕の形成年代は、弥生時代後期(約1800-1900年前)から平安時代前期(約1100年前)であると考えられる。

森本・富樫断層帯の活動

 熱野遺跡と部入道遺跡の近くには活断層である富樫断層が位置し、森本断層、野町断層と合わせて長さ約26 kmの森本・富樫断層帯を成している。熱野遺跡と部入道遺跡周辺にはそれら以外の活断層の存在は報告されておらず、これらの遺跡で確認された噴砂痕は富樫断層単独の活動または森本・富樫断層帯として一括した活動によって生じた可能性が考えられる。森本断層北部の梅田地区でのトレンチおよび遺跡の調査結果からは,約1800-2000年前に断層活動があったことが報告されている(石川県, 1997).梅田地区で断層変位が認められた遺跡は弥生時代後期であり、熱野遺跡や部入道遺跡での噴砂発生時期と同時期である。したがって、森本・富樫断層帯の最新の一括活動の時期は約1800?1900年前である可能性が考えられる。