16:15 〜 17:30
[SSS35-P02] 微動を用いた浅部構造探査の高度化(その2):自動読み取りアルゴリズムの適用
キーワード:微動, 速度構造, 表面波, 位相速度, アレイ, 地下構造モデル
1.はじめに
近年,我々は微動を用いた浅部構造探査法について,簡便で精度の高い手法を検討してきた.観測の簡易化は,微動システムの開発(先名他, 2006, 2012)や,CCA法を用いた極小アレイ観測等(長他, 2013a)で実用化した.一方で,データ解析では,位相速度をS波速度構造に直接変換する手法(Simple Profiling Method, SPM)(例えば,Heukelom and Foster,1960)を適用した上で,層構造を仮定するためのH/Vスペクトルの深度変換(長他,2013b)を提案し,簡易逆解析法(Simplified Inversion Method, SIM)(Pelekis and Athanasopoulos, 2011)を適用して分解能を向上できることを示してきた(先名他,2013).さらに長他(2014,本大会)は現時点での課題として膨大な量のデータへの対処を見据え,分散曲線・H/Vスペクトルの自動読み取りアルゴリズムを提案した.本報告では長他(2014)の自動読み取りアルゴリズムを実データに適用し,目視による読み取り結果と比較して実用性を検討する.
2.観測・解析手法について
観測・解析は,下記の流れで実施している.
1)極小アレイおよび不規則アレイでの観測
微動の観測時間は,アレイの形状(60cm極小アレイおよび,3m~10mの3点不規則アレイ)によらず15分間の連続観測としている.
2)分散曲線とH/Vスペクトルの自動解析・読み取り
微動解析ソフトBIDOを用いてデータ解析区間を自動選択し,自動解析を実行している.分散曲線およびH/Vスペクトルのピーク・谷の読み取りは長他(2014)の提案アルゴリズムで自動処理している.
3)1次元S波速度構造の推定と2次元断面の構築
波長Lと位相速度Vrの関係で示される分散曲線を深さDとS波速度Vsの関係で示される1次元S波速度構造に変換する(SPM).その際の変換式はVs=Vr/0.92, D=0.375Lとする.この1次元速度構造を空間補間して2次元断面にする.この2次元断面に, H/V深度変換による不連続深度を重ね描きする.ここまでの処理はすべて自動処理で行われる.なお1節では解析の最後にSIMを実施すると述べたが,現状ではロバスト性の問題でSIMの自動処理アルゴリズム開発には至っていない.そのため本研究ではSIMは扱わない.
3.2次元断面結果
4つの異なった堆積環境の地域(潮来市・秦野市・柏市・浦安市)で得られた微動アレイデータに上記の手順を適用して2次元断面を描いたところ,分散曲線の読み取りとH/Vスペクトルのピーク・谷の読み取りを目視で実施した場合とそれほど違わない,概ね自然なS波速度断面が得られた.なお,ボーリングのN値分布や想定地質断面図,Senna et al.(2013)の地盤モデルともそれほど違わない結果となっている..このように長他(2013)による自動読み取りアルゴリズムは,位相速度等の読み取り精度にはまだ向上の余地があるものの,比較的良好な結果が得られるものと考える.また,本報告では,さらに地盤構造の地域特性や,既往の地盤モデルとの比較を行い,手法の精度の検証を行っている.
<謝辞>
秦野市の結果については、神奈川大学荏本孝久教授等に微動観測について多大なご支援をいただいた。また、柏市の結果については、産業総合技術研究所の中澤努氏に多大なご協力をいただいた。ここに謝意を表します。
近年,我々は微動を用いた浅部構造探査法について,簡便で精度の高い手法を検討してきた.観測の簡易化は,微動システムの開発(先名他, 2006, 2012)や,CCA法を用いた極小アレイ観測等(長他, 2013a)で実用化した.一方で,データ解析では,位相速度をS波速度構造に直接変換する手法(Simple Profiling Method, SPM)(例えば,Heukelom and Foster,1960)を適用した上で,層構造を仮定するためのH/Vスペクトルの深度変換(長他,2013b)を提案し,簡易逆解析法(Simplified Inversion Method, SIM)(Pelekis and Athanasopoulos, 2011)を適用して分解能を向上できることを示してきた(先名他,2013).さらに長他(2014,本大会)は現時点での課題として膨大な量のデータへの対処を見据え,分散曲線・H/Vスペクトルの自動読み取りアルゴリズムを提案した.本報告では長他(2014)の自動読み取りアルゴリズムを実データに適用し,目視による読み取り結果と比較して実用性を検討する.
2.観測・解析手法について
観測・解析は,下記の流れで実施している.
1)極小アレイおよび不規則アレイでの観測
微動の観測時間は,アレイの形状(60cm極小アレイおよび,3m~10mの3点不規則アレイ)によらず15分間の連続観測としている.
2)分散曲線とH/Vスペクトルの自動解析・読み取り
微動解析ソフトBIDOを用いてデータ解析区間を自動選択し,自動解析を実行している.分散曲線およびH/Vスペクトルのピーク・谷の読み取りは長他(2014)の提案アルゴリズムで自動処理している.
3)1次元S波速度構造の推定と2次元断面の構築
波長Lと位相速度Vrの関係で示される分散曲線を深さDとS波速度Vsの関係で示される1次元S波速度構造に変換する(SPM).その際の変換式はVs=Vr/0.92, D=0.375Lとする.この1次元速度構造を空間補間して2次元断面にする.この2次元断面に, H/V深度変換による不連続深度を重ね描きする.ここまでの処理はすべて自動処理で行われる.なお1節では解析の最後にSIMを実施すると述べたが,現状ではロバスト性の問題でSIMの自動処理アルゴリズム開発には至っていない.そのため本研究ではSIMは扱わない.
3.2次元断面結果
4つの異なった堆積環境の地域(潮来市・秦野市・柏市・浦安市)で得られた微動アレイデータに上記の手順を適用して2次元断面を描いたところ,分散曲線の読み取りとH/Vスペクトルのピーク・谷の読み取りを目視で実施した場合とそれほど違わない,概ね自然なS波速度断面が得られた.なお,ボーリングのN値分布や想定地質断面図,Senna et al.(2013)の地盤モデルともそれほど違わない結果となっている..このように長他(2013)による自動読み取りアルゴリズムは,位相速度等の読み取り精度にはまだ向上の余地があるものの,比較的良好な結果が得られるものと考える.また,本報告では,さらに地盤構造の地域特性や,既往の地盤モデルとの比較を行い,手法の精度の検証を行っている.
<謝辞>
秦野市の結果については、神奈川大学荏本孝久教授等に微動観測について多大なご支援をいただいた。また、柏市の結果については、産業総合技術研究所の中澤努氏に多大なご協力をいただいた。ここに謝意を表します。