16:15 〜 17:30
[SSS35-P03] 微動システムの開発と今後の展開
キーワード:微動, 観測システム, クラウドシステム, ビックデータ
1.はじめに
地震動予測地図の高度化のためには、高精度な地盤モデルの作成は必要不可欠であるが、そのためのボーリング調査や反射法地震波探査は、莫大にコストがかかる。一方で、近年、直接的な地震観測以外で地震時の揺れの周期特性や地盤の速度構造を良くとらえることのできる常時微動観測が行われてきている。常時微動観測は、地震動予測のための地盤構造モデル作成に非常に有用な物理探査手法である。その観測の手軽さにより、ここ10年で各大学・研究期間では非常に多くの研究がなされている。しかしながら、研究そのものはバラバラの機材・考え方により各大学の小さな研究素材としてとじられており、データの共有等についても、ボーリングデータ以上に集約が難しい情報となってしまっている。そこで、筆者等は、微動計の管理・データベース登録等システム・教育システムをパッケージとして用意・提供し、機材・データの品質・情報管理を効率良く行っていく仕組みの構築を行っている。本報告では、これまでの取り組みと、現在実施している取り組みをまとめた報告を行う。
2. これまでの開発と展開
本研究の微動システム開発のコンセプトは、安定的(観測のばらつきが少ない)に大量のデータを取得することができる仕組みを作ることである。地面に置くだけで、短時間に高精度な微動観測を可能とし、専門家・技術者でなくても安定的に観測・データ登録・解析の一連の工程について、バラツキの少ない観測・解析結果が出せるシステムを構築するため、以下に示す4つの項目について検討してきた。
① 常時微動解析ソフト「Tremor data View」のバージョンアップと微動アレイ解析ツール「Microtremor Array Obserbation Tool(MAOTool)」の作成
② スマートフォンを利用した観測データおよび観測位置情報等のデータベースへの即時登録(スマートフォンアプリケーション「i微動」の作成/微動データベースのバージョンアップ)
③ スマートフォン等に安定的にデータ転送できる通信システムを搭載した微動計の製作(JU-310の製作)
④ 微動観測結果の即時解析による結果の閲覧および、J-SHIS等との既存システムとの相互運用による、観測地点の震度・地盤情報等との比較・解析機能(クラウド型解析機能の構築)
なお、上記システムは現時点で常時稼働しており、複数の研究者に利用されている。
3.今後の展開
筆者等の提案として、防災科研がデータセンターとしての機能を持ち、微動計の管理・データベース登録等システム・教育システムをパッケージとして用意・提供し、機材・データの品質・情報管理を効率良く行っていく開発を実施するため、現在、上記微動システムを地方大学・研究機関等の希望者に観測レクチャーおよび解析教育も提供してデータを共有しており、大きな成果を得られつつある。先々収集される微動観測や地盤情報の「ビックデータ」の管理を効率化するため、現在の微動システムを再構築する必要が出てきており、今後も開発を続けていく予定である。
<謝辞>
防災科学技術研究所の内藤昌平氏、東宏樹氏および白山工業(株)の中井俊樹氏には、微動システムの開発の段階において、貴重なご意見をいただいた。ここに謝意を表します。
<参考文献>
1) 先名重樹, 安達繁樹, 荒木恒彦, 飯澤清典, 藤原広行: 微動探査観測システムの開発, 第115 回物理探査学会予稿集, pp.120-122, 2006.
2) 先名重樹, 大井昌弘, 藤原広行:微動探査データの収集管理とデータベースシステムの構築, 地球惑星科学連合大会, S150-P010, 2007.
3) 先名重樹, 藤原広行: 微動探査観測ツールの開発その1 -常時微動解析ツール-, 防災科学技術研究所研究資料第313号, 2008.
4) 先名重樹, 東 宏樹, 武留井優子, 藤原広行:微動探査観測システム「i微動」等の開発, 第124 回物理探査学会予稿集, pp.82-84, 2011.
地震動予測地図の高度化のためには、高精度な地盤モデルの作成は必要不可欠であるが、そのためのボーリング調査や反射法地震波探査は、莫大にコストがかかる。一方で、近年、直接的な地震観測以外で地震時の揺れの周期特性や地盤の速度構造を良くとらえることのできる常時微動観測が行われてきている。常時微動観測は、地震動予測のための地盤構造モデル作成に非常に有用な物理探査手法である。その観測の手軽さにより、ここ10年で各大学・研究期間では非常に多くの研究がなされている。しかしながら、研究そのものはバラバラの機材・考え方により各大学の小さな研究素材としてとじられており、データの共有等についても、ボーリングデータ以上に集約が難しい情報となってしまっている。そこで、筆者等は、微動計の管理・データベース登録等システム・教育システムをパッケージとして用意・提供し、機材・データの品質・情報管理を効率良く行っていく仕組みの構築を行っている。本報告では、これまでの取り組みと、現在実施している取り組みをまとめた報告を行う。
2. これまでの開発と展開
本研究の微動システム開発のコンセプトは、安定的(観測のばらつきが少ない)に大量のデータを取得することができる仕組みを作ることである。地面に置くだけで、短時間に高精度な微動観測を可能とし、専門家・技術者でなくても安定的に観測・データ登録・解析の一連の工程について、バラツキの少ない観測・解析結果が出せるシステムを構築するため、以下に示す4つの項目について検討してきた。
① 常時微動解析ソフト「Tremor data View」のバージョンアップと微動アレイ解析ツール「Microtremor Array Obserbation Tool(MAOTool)」の作成
② スマートフォンを利用した観測データおよび観測位置情報等のデータベースへの即時登録(スマートフォンアプリケーション「i微動」の作成/微動データベースのバージョンアップ)
③ スマートフォン等に安定的にデータ転送できる通信システムを搭載した微動計の製作(JU-310の製作)
④ 微動観測結果の即時解析による結果の閲覧および、J-SHIS等との既存システムとの相互運用による、観測地点の震度・地盤情報等との比較・解析機能(クラウド型解析機能の構築)
なお、上記システムは現時点で常時稼働しており、複数の研究者に利用されている。
3.今後の展開
筆者等の提案として、防災科研がデータセンターとしての機能を持ち、微動計の管理・データベース登録等システム・教育システムをパッケージとして用意・提供し、機材・データの品質・情報管理を効率良く行っていく開発を実施するため、現在、上記微動システムを地方大学・研究機関等の希望者に観測レクチャーおよび解析教育も提供してデータを共有しており、大きな成果を得られつつある。先々収集される微動観測や地盤情報の「ビックデータ」の管理を効率化するため、現在の微動システムを再構築する必要が出てきており、今後も開発を続けていく予定である。
<謝辞>
防災科学技術研究所の内藤昌平氏、東宏樹氏および白山工業(株)の中井俊樹氏には、微動システムの開発の段階において、貴重なご意見をいただいた。ここに謝意を表します。
<参考文献>
1) 先名重樹, 安達繁樹, 荒木恒彦, 飯澤清典, 藤原広行: 微動探査観測システムの開発, 第115 回物理探査学会予稿集, pp.120-122, 2006.
2) 先名重樹, 大井昌弘, 藤原広行:微動探査データの収集管理とデータベースシステムの構築, 地球惑星科学連合大会, S150-P010, 2007.
3) 先名重樹, 藤原広行: 微動探査観測ツールの開発その1 -常時微動解析ツール-, 防災科学技術研究所研究資料第313号, 2008.
4) 先名重樹, 東 宏樹, 武留井優子, 藤原広行:微動探査観測システム「i微動」等の開発, 第124 回物理探査学会予稿集, pp.82-84, 2011.