16:15 〜 17:30
[SSS35-P08] 地震波干渉法及び微動解析による能登半島北西部の基盤構造の推定
キーワード:自己相関関数, H/Vスペクトル, 重力異常, 地塊構造, 能登半島
1.はじめに
近年、地下構造探査の中で地震波形記録の自己相関解析(あるいは相互相関解析)から地下構造のレスポンスを評価する地震波干渉法が注目されている。本研究では、能登半島北西部を対象に、地震波干渉法及び微動解析を用いて基盤構造の推定を行った。また、この地域における重力異常解析や反射法地震探査(佐藤・他,2007)の結果と比較を行うことで、地震波干渉法及び微動解析の有効性について検討し、能登半島の地塊構造について議論する。
2.データ及び解析手法
(1)地震波干渉法
2007年能登半島地震合同余震観測グループ(酒井・他, 2007)による観測点の内、44地点で観測された2007年能登半島地震の余震データから観測点に対する入射角が35度以内であり、S波の検測がなされているものを利用した。変位波形のSH成分に2 Hz のハイパスフィルターを適用し、S波到達時から10秒間を解析区間として自己相関関数(ACF)を計算した。各観測点において得られたACFを重合処理し、その観測点におけるACFとした。
(2)微動解析
地震波干渉法の解析を行った44の観測点の設置地点において微動観測を行い、得られた微動データのH/Vスペクトル比を求めた。二層構造を仮定し、H/Vスペクトルと理論H/Vスペクトル比のピーク周波数が一致するよう、基盤構造を推定した。
3.結果・まとめ
地震波干渉法による深度推定において、ACFの卓越したピークが確認される観測点はそのピーク時間より基盤深度を求め、卓越したピークが複数存在する観測点は重力異常解析より得られた基盤構造を参考にして基盤深度を求めた。なお、地震波速度は佐藤・他(2007)のP波速度3.2km/sを使用し、地震調査研究推進本部2012が提案する全国一次地下構造モデルよりP波速度3.2km/sに対応する値としてS波速度1.7km/sを使用した。
反射法地震探査(佐藤他,2007)による基盤深度が100m以下の浅い地域では、反射法地震探査による結果と地震波干渉法による結果は一致しなかった。またACFのみで深度を推定できた観測点は44地点中10地点であった。一方、微動解析では44地点中35地点で深度推定が可能であった。したがって、地震波干渉法は能登半島北西部において基盤深度の推定を行う上では有効的な手法ではないと考えられる。
深度推定が可能であった観測点では、地震波干渉法、微動解析、重力異常解析より得られた結果は概ね一致しており、桑塚地塊は猿山地塊よりも基盤深度が浅いことが示された。2007年能登半島地震では桑塚地塊での隆起が観測されており、2007年能登半島地震の震源断層のような海域の活断層の活動によって桑塚地塊が継続的に隆起して基盤深度が浅くなったという考え(Hiramatsu et al., 2008)と本研究結果は整合的である。
謝辞:本研究では2007年能登半島地震合同余震観測グループによる地震波形記録を使用しました。また微動解析では防災科学技術研究所から微動計を借用し、防災科学技術研究所の先名重樹博士には微動解析についてご指導いただきました。記して感謝いたします。
近年、地下構造探査の中で地震波形記録の自己相関解析(あるいは相互相関解析)から地下構造のレスポンスを評価する地震波干渉法が注目されている。本研究では、能登半島北西部を対象に、地震波干渉法及び微動解析を用いて基盤構造の推定を行った。また、この地域における重力異常解析や反射法地震探査(佐藤・他,2007)の結果と比較を行うことで、地震波干渉法及び微動解析の有効性について検討し、能登半島の地塊構造について議論する。
2.データ及び解析手法
(1)地震波干渉法
2007年能登半島地震合同余震観測グループ(酒井・他, 2007)による観測点の内、44地点で観測された2007年能登半島地震の余震データから観測点に対する入射角が35度以内であり、S波の検測がなされているものを利用した。変位波形のSH成分に2 Hz のハイパスフィルターを適用し、S波到達時から10秒間を解析区間として自己相関関数(ACF)を計算した。各観測点において得られたACFを重合処理し、その観測点におけるACFとした。
(2)微動解析
地震波干渉法の解析を行った44の観測点の設置地点において微動観測を行い、得られた微動データのH/Vスペクトル比を求めた。二層構造を仮定し、H/Vスペクトルと理論H/Vスペクトル比のピーク周波数が一致するよう、基盤構造を推定した。
3.結果・まとめ
地震波干渉法による深度推定において、ACFの卓越したピークが確認される観測点はそのピーク時間より基盤深度を求め、卓越したピークが複数存在する観測点は重力異常解析より得られた基盤構造を参考にして基盤深度を求めた。なお、地震波速度は佐藤・他(2007)のP波速度3.2km/sを使用し、地震調査研究推進本部2012が提案する全国一次地下構造モデルよりP波速度3.2km/sに対応する値としてS波速度1.7km/sを使用した。
反射法地震探査(佐藤他,2007)による基盤深度が100m以下の浅い地域では、反射法地震探査による結果と地震波干渉法による結果は一致しなかった。またACFのみで深度を推定できた観測点は44地点中10地点であった。一方、微動解析では44地点中35地点で深度推定が可能であった。したがって、地震波干渉法は能登半島北西部において基盤深度の推定を行う上では有効的な手法ではないと考えられる。
深度推定が可能であった観測点では、地震波干渉法、微動解析、重力異常解析より得られた結果は概ね一致しており、桑塚地塊は猿山地塊よりも基盤深度が浅いことが示された。2007年能登半島地震では桑塚地塊での隆起が観測されており、2007年能登半島地震の震源断層のような海域の活断層の活動によって桑塚地塊が継続的に隆起して基盤深度が浅くなったという考え(Hiramatsu et al., 2008)と本研究結果は整合的である。
謝辞:本研究では2007年能登半島地震合同余震観測グループによる地震波形記録を使用しました。また微動解析では防災科学技術研究所から微動計を借用し、防災科学技術研究所の先名重樹博士には微動解析についてご指導いただきました。記して感謝いたします。