日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT58_30PM2] 空中からの地球計測とモニタリング

2014年4月30日(水) 16:15 〜 18:00 313 (3F)

コンビーナ:*楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、座長:光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))

16:45 〜 17:00

[STT58-03] 空中電磁探査技術を活用した火山体における大規模崩壊予測技術に関する研究

*木下 篤彦1高原 晃宙1一色 弘充1石塚 忠範1大平 知秀2大森 徹治3山根 宏之3荒井 健一4清野 耕史5辻岡 秀樹6 (1.独立行政法人土木研究所土砂管理研究グループ火山・土石流チーム、2.国土交通省東北地方整備局福島河川国道事務所、3.国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所、4.アジア航測株式会社、5.大日本コンサルタント株式会社、6.応用地質株式会社)

キーワード:空中電磁探査, 大規模崩壊, 火山

活動が活発な火山の下流域では常に土砂災害が発生する危険性がある。特に豪雨時に大規模な山体崩壊が発生した場合には崩壊土砂が土石流化し下流域で土砂堆積や氾濫により大きな被害が発生する恐れがある。これまで例えば深層崩壊地などで空中電磁探査を用いて風化土層厚を推定する手法が提案されている。一方で、豪雨時等に崩壊の可能性がある斜面を予測するには、崩壊面を推定する手法を確立すること、斜面における水文過程を推定すること、等が必要であるが、現在のところこれらについて十分に検討されているとは言い難い状況である。そこで本研究では吾妻山、富士山を事例とし、空中電磁探査を実施し併せて実施した地質調査や水質調査の結果から崩壊面の推定手法及び水文過程を予測する手法について検討を行った。本研究では、まず、吾妻山、富士山において、地形・地質の特徴、土砂災害の実績、火山活動履歴等の文献調査を行った。次に現地調査を行い、大規模土砂移動に関連した土質構造の確認、土砂移動の原因となる熱水変質状況の確認、湧水・温泉湧出状況の確認を行った。これらの結果を参考にして空中電磁探査のエリア等を検討した。探査対象は山体の頂部や代表的な火口が含まれ、大規模な崩壊が起こりうる15°以上の勾配を含むエリアとした。探査エリアは吾妻山が約18km2、富士山が約120km2であった。空中電磁探査の結果は深度ごとに平面的に整理するとともに火口や地下水位が高い箇所等土砂災害の発生が予想される箇所については測線を引いて深度方向の比抵抗値も縦断的に把握できるよう2次元的に整理した。これらの低比抵抗値結果を従来の地形・地質の調査結果と照らし合わせ空中電磁探査の結果との適合性を検証した。また、さらに詳細に空中電磁探査の結果の適合性を確認する目的で、吾妻山では周辺の10渓流で水文・水質調査を行った。調査項目は、流量・電気伝導度・pH・水温・イオン状シリカ濃度などであった。また、富士山では、空中電磁探査による比抵抗値と地質との関係を調べる目的でボーリング調査も実施した。これらの調査結果から、火山地域で空中電磁探査を用いることにより、地質区分をおよそ推定できること、地下の水文状況を把握できることが分かった。このことから、空中電磁探査を用いれば豪雨時に崩壊する可能性がある斜面をおよそ予測することが可能である。一方で、空中電磁探査のみであると崩壊深や崩壊土砂量などを詳細に推定することはできない。これらを推定するには、空中電磁探査の結果から危険な箇所を推定すること、その箇所でボーリング調査や地上での物理探査を実施すること、水質・水文調査を実施することなどその他の調査を実施することによって空中電磁探査の結果を補足する必要がある。今後はモデル的にいくつかの火山で空中電磁探査を含む調査を実施し、データを蓄積していくことにより火山地域での崩壊危険箇所の推定技術、崩壊深・土砂量の推定手法を確立していきたいと考えている。