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[STT59-06] ポラリメトリSARデータによる地表粗度・比透磁率・比誘電率の算定法とその応用
キーワード:ALOS PALSAR, 偏波モード, 後方散乱係数, 非線形最適化, 鳥取砂丘
合成開口レーダ(SAR)リモートセンシングは全天候型であり,マイクロ波の干渉処理で地殻変動が抽出できるという利点がある。最近では,地表物質の後方散乱強度が偏波ごとに異なるという原理に基づくポラリメトリSARも広く応用されている。しかし,ポラリメトリSARの用途は画像分類などに限られており,地表物性を評価するまでには至っていない。そこで,本研究では地質の同定や土壌含水率推定の観点から,Saepuloh et al.による手法mdPSAR(magnetic peability and dielectric permittivity from Polarimetric Synthetic Aperture Radar)を用い,HH・VV・HVの3偏波SARデータから地表粗度,比透磁率,比誘電率を導き出すことを試みた。mdPSARでは,最初に地表粗度をHVモードの後方散乱係数と地形のフラクタル性を仮定した実験式(Campbell and Shepard, 1996)から求める。次に,Small Perturbation Model(Fung and Chen, 2010)という後方散乱係数モデルを用い,これとHHとVVの2偏波データとが一致するように,非線形最適化法の一つであるNelder-Mead Simplex法によって比透磁率と比誘電率を算定する。2008年10月25日と2009年4月27日に取得されたALOS PALSARデータを用い,鳥取砂丘周辺にmdPSARを適用した。その結果,計算モデルと実データとの差はHH,VVモードともに平均で1%程度と小さく,シーンにわたる誤差の分布は比較的平坦であった。2シーンの砂丘部の比誘電率は13.4,10.6と得られ,これらは湿潤砂の値に調和的であるとともに,降雨後のシーンの方が高い値であった。また,砂丘部の比透磁率は周囲に比べて高く,これは磁鉄鉱を含む花崗岩の風化に砂が由来することを考えれば妥当といえる。このようにmdPSARの有効性が確かめられた。ただし,住宅地のような人工構造物の領域での誤差は10%を超えるところもあり,このようなHHモードの強い地表物に対する地表粗度の推定式の改良が必要である。mdPSARを南極昭和基地付近のPALSARデータにも適用しており,露岩域と雪氷域の分布,氷の融解状態,クレバス地形の発達などを地表粗度と比誘電率の時間-空間変化によって明らかにすることを目指している。文 献Campbell, B.A., Shepard, M.K. (1996) Lava flow surface roughness and depolarized radar scattering, J. Geophys. Res., v. 101 (E8), 18941-18951.Fung, A.K., Chen, K.S. (2010) Microwave Scattering and Emission Models for Users, Artech House, Norwood, MA.Saepuloh, A., Urai, M., Koike, K., Sumantyo, J.T.S.: An advanced technique to identify surface materials on an active volcano by deriving magnetic permeability and dielectric permittivity from polarimetric SAR data, IEEE Geosci.& Remote Sens. Lett. (under review)