日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT59_29AM2] 合成開口レーダー

2014年4月29日(火) 11:00 〜 12:40 414 (4F)

コンビーナ:*山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)、宮城 洋介(防災科学技術研究所)、座長:宮城 洋介(防災科学技術研究所)、森下 遊(国土交通省国土地理院)

11:35 〜 11:50

[STT59-10] ALOS/PALSAR干渉画像の誤差評価

*橋本 学1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:合成開口レーダー干渉法, PALSAR, だいち, 誤差, 地殻変動

四国地方は,沖合の南海トラフにおいてフィリピン海プレートが沈み込みを行い,顕著な地殻変動が生じている.GNSSの観測によると,西北西方向の水平変位が卓越し,南から北に向かう変動勾配があることが確かめられている.この変位場は,東西方向の変位に感度が高い人工衛星搭載型SARによる観測に適している.この観察に基づいて,我々は四国を対象に平均変動速度をALOS/PALSARを用いて検出することを試みて来た.観測機会の多い北行軌道の画像を主に解析して来たが,観測時期によっては電離層擾乱によると考えられる見かけの変動(peak-to-peakで最大4?50cm程度)が認められるため,これらを目視により除去し,スタッキングを行なった.しかし,四国をほぼカバーする4パスの画像の解析結果を重ねると,明らかに東西に大きな変位速度勾配を持つ結果となり,GNSSの観測結果とあわない.また,中国地方でのパス間の不連続が顕著である.このため,依然系統誤差が残っていると考えられる.そこで,系統誤差がどの程度の大きさであり,そしてどのような空間分布を持っているのかを知るために,GNSSの変位と干渉画像の視線距離変化を直接比較し,その誤差評価を行なった. 手順は,次の通りである.(1)特定のALOS/PALSAR画像ペアに対して,その撮像領域内に位置するGEONET観測点を抽出し,マスター・スレーブ撮像期間の変位3成分を求め,視線距離変化に変換する.(2)当該の干渉画像から,GEONET観測点での視線距離変化を抽出する.(3)GEONET観測局毎にGNSS観測および干渉画像から得られた視線距離変化の差を計算する.(4)GEONET観測局での視線距離変化の差を曲面で近似・内挿する.あわせて,平均・標準偏差や緯度・経度・標高依存性を調べる.(5)(4)で得られた近似曲面を観測干渉画像に加える.例えば,パス419の2010年4月11日と5月27日のペアにGEONETの変位からは,46日間ということもあり,ほとんど変動が期待されない.しかし,干渉画像には,四国において東西で±20cm以上の視線距離変化が認められる.また,中国地方においても顕著な舌状の視線距離短縮領域が見られる.これに対して,この干渉画像に対する手順の(3)および(4)の結果は, GEONET計算値から干渉画像を引いているので,正負逆転したパターンが得られる.干渉画像中には36点のGEONET観測点があり,これらの観測点における視線距離変化の差の標準偏差を計算すると,7.8cmとなる.平均は-1.7cmであるが,GEONET観測点はITRF2005,干渉画像はアンラップ時のサンプル点(画像のほぼ中心)に相対的なものとなるため,平均そのものには意味はない.GEONET観測点の緯度・経度・標高に対する視線距離変化の差を見ると,北緯34°を境に緯度・経度に対して2つのグループに分けられ,明らかに線形関数では視線距離変化の差を近似することはできない.ここでは,GMTのSurfaceコマンドを用いて,近似・内挿した.最後に観測干渉画像に内挿した視線距離変化の差を足し合わせることにより,補正干渉画像を得る.全体的に黄色くなり,GEONETの変位分布に沿うようになった.ただし,波長20km程度の変動は依然残っている. その他のペアについても同じ手順で解析した.解析したペアについて視線距離変化の差に関して標準偏差を計算した.最も小さい標準偏差は2009年1月6日と2月21日のペアで1.2cm,最大は2010年5月27日と7月12日のペアで18.9cmである.24ペア中,2cm以下は4例,2-4cmは7例,4-6cmは6例,6-8cmは3例,8-10cmが2例,10cm以上が2例となっている.中央値は4.5cmとなる.隣接するパス418(GEONET観測点30点)では,解析した26ペアに対して,標準偏差の最小は1.5cm,最大は19.8cm,中央値は,4.7cmである.電離層擾乱も含めたPALSAR干渉画像の持つ誤差評価として,一つの目安となるであろう. その他のパス(417,418および420)にも同じ手順を適用し,四国全体をカバーする補正干渉画像を作成した(添付図).概ねGEONETの変位場に整合的な結果が得られた.ただ,東端のパス417の補正干渉画像が,中国地方において隣のパス418と不連続が生じている.パス417では,垂直基線長の長いペアが他のペアより含まれる.垂直基線長が長い場合,山岳部において干渉性が低下することから,GEONET観測点で視線距離変化が得られないことがある.その場合,平野のデータのみで補正せざるを得ず,系統的な誤差が残る結果となったと考えられる.