日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT59_29PO1] 合成開口レーダー

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)、宮城 洋介(防災科学技術研究所)

18:15 〜 19:30

[STT59-P01] 干渉SARの電離層補正に向けた,GPS-TECによる日本周辺の電離層擾乱の特性把握

*中川 弘之1宗包 浩志1黒石 裕樹1神原 雅史2 (1.国土交通省国土地理院、2.株式会社 パスカリア)

キーワード:干渉SAR, 電離層擾乱, TEC, GEONET

干渉合成開口レーダー(干渉SAR)では,電離層擾乱に伴う電波の遅延誤差により正確な地盤変動情報が抽出できない場合があることが問題となっている.国土地理院では2013年度より,GEONETの2周波観測データから得られる電離層電子密度(TEC)に関する情報に基づいて,干渉SARに対して電離層補正を行う手法の研究を実施している.
初年度の2013年度は,日本とその周辺域における電離層擾乱現象の特性を把握するため,2000年から2011年までの12年間を対象に,網羅的な調査を行い,電離層擾乱現象を特定し,特性把握をおこなった.また,特定された電離層擾乱の発生時のうちで,対応するALOS PALSARの干渉ペアがあるものについて電離層位相遅延差の推定画像を試作し,これを実際のSAR干渉画像と比較を行った.本発表ではこのうち,前段の電離層擾乱の特性把握の結果について報告する.
まず,対象期間のGEONETの30秒データから,宗包(2013)の手法により観測点毎に30秒間隔で,天頂方向のTEC,TECの傾斜の北南成分および東西成分からなるモデルを推定した.その際,定数3600秒のハイパスフィルタをかけて低周波成分を除去した.
このGPS-TECのデータを元に,対象期間に発生した電離層擾乱現象を同定し特性を分析した.その際に,個々の擾乱について詳細に検討して現象の同定や特性値の精度を高めるよりも,TECのRMSなどの指標をできるだけ活用して電離層擾乱現象の傾向を把握することを優先した.
手順は以下の通りである.まず,観測点毎の天頂方向のTECの1時間のRMSが閾値以上となる電子基準点の数が一定数を超えている場合に電離層擾乱現象が発生していると見なし,その日時を抽出した.次に,それぞれの日時について(独)情報通信研究機構のWebサイトに掲載されている「GEONET GPS全電子数マップ」を目視し,マップのパターンに応じて,その時に発生している擾乱現象を,「伝播性電離層擾乱(TID) 」「プラズマバブル 」「その他」に分類した.
その後に,「TID」と「プラズマバブル 」に分類された擾乱現象それぞれについて,開始時間と終了時間,現象の影響範囲とその時間推移等の特性を,観測点毎に計算した10分間のTECのRMSに基づいて決定した.加えて,TIDの波長やプラズマバブルの北端緯度など,現象の種類毎の特性値も推定した.これらを統計的にとりまとめることにより,対象期間における日本周辺の電離層擾乱現象の特性を明らかにした.
この調査の結果,対象期間中に8,815件の電離層擾乱現象を同定した.年次毎の件数は2001年の967件をピークにその後徐々に減少し,2007年に471件と最小になり,その後再び増加傾向がみられた.この傾向は太陽活動周期と整合している.また,プラズマバブル,TIDともに太陽活動が活発な時に多く不活発な時に少ない傾向がみられた.
TIDについては,5月~8月の夏季に発生頻度が多い傾向がはっきりと見られた.また,ローカルタイムの22時を中心として前後2時間の間に集中して発生していることも明らかになった.プラズマバブルについては,ローカルタイムの日没後、夜半にかけて発生頻度が高かった.これらは先行研究の結果と整合的である.

参考文献
宗包浩志(2013):GEONETデータを用いた「だいち」SAR干渉画像の電離層補正手法の開発(序報),STT57-09,日本地球惑星科学連合2013年大会
(独)情報通信研究機構:GEONET GPS全電子数マップ,http://seg-web.nict.go.jp/GPS/GEONET/