日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT59_29PO1] 合成開口レーダー

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)、宮城 洋介(防災科学技術研究所)

18:15 〜 19:30

[STT59-P08] PS-InSAR法による伊豆大島の地殻変動の検出と火山性変動源の推定

*長谷川 雄一1田部井 隆雄2小澤 拓3 (1.高知大学大学院総合人間自然科学研究科、2.高知大学理学部、3.防災科学技術研究所)

キーワード:PS-InSAR法, 時系列解析, 伊豆大島, 地殻変動, 火山性変動源

伊豆大島の三原山では, 過去800年間に合計21回噴火を繰り返している. 最後の噴火は1986年に山頂カルデラ内部で発生している. 定常的な火山活動を監視するために, 時空間的に密な観測を行うのは重要である. しかし, 山岳域に観測網を構築するのは容易ではない. 本研究では, 恒久散乱体干渉SAR (PS-InSAR)法による干渉時系列解析を行い, 伊豆大島全体の変形を検出する. その結果をもとに地下にどのような変動源が存在しているかを推定する. 解析には, 2006年6月~2011年2月までに北行および南行軌道から撮影されたALOS/PALSAR画像40枚を使用した.
北行軌道画像解析から2007年10月~2011年2月の期間にカルデラ内部において衛星視線方向(LOS)に距離が最大約15cm伸長するパターンが, 南行軌道画像解析から2007年1月~2010年3月の期間に同様の領域において距離が最大約14cm伸長するパターンが認められた. 次に, 島内4ヶ所のGEONET観測点における座標時系列をLOS変位に変換し, 干渉時系列解析結果と比較した. その結果, 両者の差のRMSは1.3~3.2cmの範囲に収まっており, 干渉時系列解析結果は有意と判断される. また, GPS時系列を基準として解析過程で取り除けなかった衛星軌道決定のずれに起因する系統的な誤差を軽減した.
両軌道画像解析から得たLOS変位量を組み合わせ準上下成分と準東西成分に分解し, 2007年9月時点を基準とした累積変位量を求めた. その結果, カルデラ内部に2007年~2010年までに沈降と隆起を繰り返し最終的に最大約16cmとなる沈降域が, 島の東側沿岸部に同期間において最大約11cmとなる隆起域が得られた. 準上下成分の結果を用いて, 伊豆大島の変形を説明する圧力源モデルの推定を行った. 島内全体の変形が等方的ではないため, 水平位置と深さの異なる球状圧力源(Mogi, 1958)を浅部と深部に2つ設定した. 両者の圧力源の水平位置と深さはグリッドサーチ法によって推定した. その結果, 体積が増減を繰り返す圧力源がカルデラ内部西側の深さ3.0~4.5kmに, 体積増加量が年間約800万m3とほぼ一定の圧力源が三原山火口から北東方向に約1km離れた位置の深さ6.0~9.0 kmに求まった. また, 準上下成分の結果と求めた体積変化量から算出される鉛直成分の残差より, カルデラ内部において両者の残差が大きくなっていることが判明した. したがって, 深部のマグマ溜まりはマントルからのマグマの供給により膨張を続け, 浅部のマグマ溜まりはカルデラ内部に広がる溶岩の荷重と深部マグマ溜まりからのマグマの供給によって収縮と膨張を繰り返していると考えられる.